富士山火口に遭難男性の遺体 静岡県警が収容 別の2遺体も発見
23日に富士登山をしていた東京都日野市の会社員男性(53)が行方不明になった遭難事故で、静岡県警は26日までに男性とみられる遺体を富士山火口内で発見し、同日収容したと明らかにした。男性の捜索の過程で、火口内で別の成人登山者の2遺体も見つかった。 県警によると、身元が分からない2遺体は後日引き上げる。関係者によると、昨年9月からの富士山閉山期間中に本県側と山梨県側で複数の行方不明届が出されているといい、2遺体は冬季登山者の可能性もあるという。 県警によると、会社員男性は小山町の須走口5合目に車を止め、山頂まで登山したとみられる。男性の家族は、22日午前10時ごろに山頂付近の写真が送られてきたのを最後に連絡が途絶えたことから、23日午前6時ごろに110番した。男性は救助用のヘリコプターに位置情報を伝える機器を所持していた。 関係者によると、男性はショートスキーを持って登山し、残雪のある火口付近で滑走しようとしていたとみられる。 御殿場署は「富士山を身近に感じる人も増えているが、閉山中の登山は周囲に人がほとんどおらず、常に危険と隣り合わせ」と危険性を指摘。「事前に登山届を出し、十分な装備と余裕を持った登山を徹底して」と呼びかけている。 県警が公表したデータによると、富士山の本県側で2023年中に発生した山岳遭難は75件(前年比19件増)だった。遭難者数は85人(同26人増)で、県内全体の山岳遭難者の56・6%を占めた。内訳は病気28人、転倒21人、道迷い15人、疲労12人、滑落3人、転落1人などで、死者5人(同1人増)、重傷者9人(同4人増)、軽傷者15人(10人増)。登山時に体力を使い果たし、下山中に足に踏ん張りがきかなくて転倒したり、疲労で行動不能になったりするケースが目立ったとした。 同年7月1日~8月31日に絞ると、発生件数は61件(同14件増)、遭難者数は64人(同16人増)だった。死者1人(同1人増)、重傷者5人(同1人増)、軽傷者(同10人増)。富士山世界文化遺産登録10年の節目であったことに加え、新型コロナウイルスによる行動制限がなくなったことなどにより夏季登山者が増えたことで、山岳遭難者も増加したとみられる。 静岡県側3ルートは7月10日に開山日を迎える。県警は山岳遭難の防止に向け、(1)登山計画の作成と万全な装備品の準備(2)登山計画書・登山届の提出(3)地図やコンパスの携行と活用法の習得(4)手入れされた登山靴や登山用具の使用(5)悪天候や視界不良、体調不良などの際の早めの状況判断―などを呼びかけている。
静岡新聞社