パニック映画『ツイスターズ』は真夏のデート映画に最適! “ちゃんと怖い”竜巻描写も
『ツイスターズ』にはスリル、ショック、サスペンスの全てがある
アメリカにおいて竜巻は定番の災害である。山火事と並んで、ニュースでよく見かける大災害だ。一方ここ日本では、突風や竜巻は起きるが、アメリカほど巨大なものは滅多に起きない。そのせいか、私の中では「竜巻」に対して「怖い」より「スゲー」の方が勝ってしまう。災害というより、大規模な自然の神秘として見てしまうのだ(オーロラとかに近い)。そんなわけで数々の竜巻映画を観ても、「迫力あるなぁ」とは思いつつ、「怖い」とは思えなかった。しかし、この映画は違う。先にあらすじコーナーで書いたように、竜巻映画テッパンにして、あるあるの安全策「高架下に隠れる」が決して絶対でないことを明示する。「竜巻を舐めるなよ」という作り手たちの気持ちが伝わってくるようだ。竜巻という災害の恐ろしい箇所を、竜巻になじみのない私にも伝わるように描いてくれている。 中でも白眉は夜に突然襲ってくるシーンだろう。闇の中から、真っ黒な竜巻が姿を現すところは、ほとんどゴジラの出現シーンのようだ。特にこの夜のシーンは、ほんの一手でも判断を間違えれば、即、空に持っていかれる緊張感がいい。竜巻に遭遇したときの正解を知っていないと死ぬし、正解を知っていても最後は運任せ。人間のちっぽけさを思い知らされる、圧倒的な絶望感も最高だ。素直に「竜巻、怖っ」と思えること請け合いである。だからこそクライマックスのカタルシスもたまらない。文字通り嵐のようにやってきて、嵐のように去る。自然現象の非情さがしっかりと描かれている。 恋はスリル、ショック、サスペンスと言うが、本作はまさにその全てがある。多くの人が空に吸い込まれて帰ってこないが、直接的な残虐シーンも少なく、何より一人の女性の再起の物語として、男と女の心地よい距離感を楽しむ映画として、非常に丁寧な作りである。少年少女の真夏のデート映画に最適であると断言したい。そんなふうに映画を活用したことがない私が言うのも何だが、きっとこれなら大丈夫だ。たぶん。
加藤よしき