永世棋聖の称号を獲得した藤井聡太の7月の対局を振り返る
棋聖戦を防衛し、5連覇で永世棋聖の称号を獲得した。続く王位戦の防衛戦も永世資格の掛かったシリーズである。7月で藤井は22歳に。既に多数の実績を重ねているが、世間的にはまだ大学4年の学年で、まだまだ伸び盛りだ。 ※対局予定棋士の名前の後の()内は藤井から見た過去の対戦成績。 【写真を見る】永世棋聖の称号を獲得した藤井聡太 7月1日にヒューリック杯第95期棋聖戦五番勝負第3局で山崎隆之八段と対戦。相掛かりから早い段階で大駒が交換になる決戦へ。終盤に入ってからは一気に差を広げ、最後は相手の攻めを見切って冷静に勝ち切る。これで3連勝で5連覇を達成。通算5期目の棋聖で、永世棋聖の資格を得た。21歳での永世称号獲得は史上最年少。 7月6、7日に伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦七番勝負第1局で渡辺明九段と対戦。後手の渡辺が角道を止めてじっくりとした展開へ。藤井は右四間から攻勢を取っていく。しかし渡辺の巧みな駒組の前に仕掛けを得られず持ち時間を多く消費した状態で千日手となってしまう。指し直しは相掛かりから難しい将棋となるが、時間の少なさと渡辺の冴え渡る指し回しの前に劣勢へ。いよいよ追い詰められたが最後までギリギリの局面に持ち込む粘りから、一分将棋の中で渡辺にミスが出る。絶体絶命に見えた藤井の玉が際どく詰まず、土壇場で大逆転勝ちとなった。 7月17、18日に王位戦第2局で渡辺九段と対戦。相掛かりから第1局の指し直し局同様の形へと進む。藤井が手を変えてからは長考の応酬でじっくりとした展開で封じ手へ。二日目に入り、徐々に形勢を損ねていく。差は縮まらず、珍しく追い込むこともできずに寄せ切られてしまった。これでシリーズは1勝1敗に。 7月30、31日に王位戦第3局で渡辺九段と対戦。角換わり腰掛け銀模様の出だしから、後手の渡辺が速攻を仕掛ける。渡辺の攻勢に苦しい時間が長かったが、粘り強くチャンスを待って混戦に持ち込む。最後はギリギリの競り合いの中、パズルのような攻防手を連発し、際どく抜け出した。これで七番勝負は2勝1敗となり、第4局は8月19、20日に行われる。 第72期王座戦五番勝負の挑戦者は永瀬拓矢九段(15勝7敗)に決定。第1局は9月4日に行われる。 第32期銀河戦本戦で藤井はHブロック最終戦に登場する。手前には近藤誠也七段、三浦弘行九段らが控えている。放映は10月の予定で、勝てば決勝トーナメント進出。 第74回NHK杯将棋トーナメント本戦で、藤井は2回戦で西山朋佳女流三冠(初手合)と対戦する。 第45回将棋日本シリーズJTプロ公式戦で、藤井は2回戦で佐々木大地七段(9勝4敗)と対戦する。 ABEMAトーナメント2024で藤井はリーダーとして出場。チームメイトには羽生善治九段と青嶋未来六段を指名。2連勝で予選を通過し、本戦1回戦ではチーム渡辺(渡辺明九段、山崎隆之八段、岡部怜央四段)と対戦する。 文=渡部壮大
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