FRB高官発言よりも経済統計が重要-米債券投資家への新たな教訓
マクロデータはこのところ、債券投資家にとって好材料となっている。5月のコアCPIは予想を下回る前月比0.2%の上昇となり、予想を上回る伸びとなってインフレ高進の懸念をあおった今年初めの展開からは歓迎すべき変化を見せている。新規雇用者数は依然堅調だが、求人数、失業保険申請件数、失業率など、他のデータは労働市場が冷え込みつつあることを示唆している。
こうしたデータは、年内に利下げが開始されるという投資家の確信を高めた。市場は年内に2回の0.25ポイント引き下げの可能性が高いと見ており、デリバティブ取引の動向は最初の利下げは9月にも行われるとの見方を示唆している。
これは、いわゆる金利予測分布図(ドットプロット)で示された当局者の利下げ予想よりやや積極的なものだ。中央値では今年の利下げは1回で、3月の会合で予告された3回から後退した。しかし2025年については、前回示された3回を上回る4回の利下げが見込まれている。
ただパウエル議長は、金融当局者は「強いシグナルを送ろうとしている」わけではないとし、投資家はこれらの予測を割り引いて聞くべきだということを示唆している。
乖離(かいり)縮小
連邦準備制度はデータ次第の姿勢をとるとは言っても、経済指標の一つ一つに反応して政策の軌道を変えることは意味しない。債券相場は不安定であるものの、市場の見方は昨年終盤よりもはるかに金融当局と歩調が合っている。トレーダーらは当時、3月にも利下げサイクルが始まるとみていた。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のストラテジスト、アイラ・ジャージー、ウィル・ホフマン両氏は、「米経済は十分堅調で、連邦準備制度が利下げを開始するのは11月の米大統領選後となる可能性がある。利下げが開始されるまで逆イールドの状態が続くだろう。景気はトレンドを大きく上回り、インフレ率も中銀目標である2%を上回っているにもかかわらず、連邦準備制度のセンチメントはおおむね中立を保っている」と指摘する。