サントリーが低アル強化へ 年末予定のスト系酎ハイ商品は発売中止、高アル販売は継続
サントリーの鳥井信宏社長は6日、都内で開いた適正飲酒に関する取り組みの発表会で、アルコール度数の低い「低アルコール(低アル)」酒類の開発を強化する方針を示した。鳥井氏は「お客さまの要望が低アル化していることを含め、商品開発を考える」と説明し、今年後半に予定したアルコール度数9%の「ストロング系(スト系)」と呼ばれる高アルコール酎ハイの新商品の発売を中止したことも明かした。ただ、ストロング系酎ハイも一定の需要があることから、販売は続ける方針だ。 【表でみる】ビールロング缶1本以上で大腸がんリスク…疾病別の発症リスクとアルコール量 ■転期迎えるストロング系 厚生労働省は2月、ビールのロング缶1本分のアルコール摂取でも大腸がんの発症リスクが高まるなどとする飲酒に関するガイドラインを発表した。これも受け、酒類業界は適正飲酒への対応を加速させている。 そうした中で、スト系商品は転換期を迎えている。今年に入り、アサヒビールとサッポロビールがアルコール度数8%以上の缶酎ハイの新商品を販売しない方針を明示した。キリンビールもスト系商品の販売の見直しに向けた検討を始め、9月にはアルコール度数3%の低アルの新商品を9年ぶりに発売するなど、低アル商品の強化も進めている。これまで、サントリーはスト系飲料や低アルに関する具体的な方針を示しておらず、対応が注目されていた。 ■広がる適正飲酒の啓発活動 一方で、酒類メーカーによる適正飲酒の啓発活動も広がっている。 サントリーは今月6日から「ドリンクスマイル」と題した適正飲酒と飲酒の魅力を伝える活動をスタートさせた。同日から10日まで東京ミッドタウン日比谷(東京都千代田区)で、適正飲酒を学びながら飲酒を楽しめる期間限定のバーを開設した。お酒の適量は個人差があることや酔いにくいお酒の飲み方などを伝えるセミナーを2025年から、企業や自治体、大学で年間3万人を目標に実施する。 アサヒは、お酒を飲む人も飲まない人も楽しめる生活を創造する「スマートドリンキング(スマドリ)」を掲げ、その取り組みの発信拠点として、東京・渋谷にノンアルコール飲料やカクテルのアルコール度数を選べるメニューを取りそろえたバーをオープンさせている。8月にはサッポロやクラフトビールメーカーと共同で、アルコール度数1%未満の「微アルコール」に特化した飲酒イベントを都内で開くなど、適正飲酒を伝える取り組みを積極化させている。(西村利也)