「働けない自分に価値はない…」パニック障害で失った15年 「惨めだった」生活保護暮らしから社会復帰目指した49歳女性の足跡
自信になったデイケア、自分の癖を知る機会に
2022年7月、まずは通院先でデイケアプログラムに通うことにした。だが、「いざ始めるまでも、美保さんの不安は強かった」と小百合さんは振り返る。「無理、できない」と思いがちな美保さんに対し、「途中で帰ってもいい」と安心を保障。週3日のデイケアプログラムを開始すると、朝から昼食を挟み夕方までの日程をこなすことができた。半年間通い続けた経験は、美保さんにとって大きな自信になった。
プログラムの内容はコミュニケーション力を高める講座や医師の話などさまざま。特に印象に残っているのは「集団認知行動療法」だ。考え(認知)と行動を見直すことを通して気持ちや体調を整える狙いがあり、患者10人ほどで自分の近況をテーマに意見交換。「自分の認知の癖を知る機会になった」と美保さん。気分を変えるには、行動をしてみる―といったストレスへの対処法も学んだ。
ときどき発作は起きるけれども…
それでも事務職の仕事を始める直前の3月には、大きな不安に襲われた。週5日も職場に通えるか、人間関係でつまずかないだろうか、うまくいかなければ生活保護に逆戻りだ―。ぐるぐる考えるのをやめられず、半年ぶりにパニック発作を起こした。
毎日働く不安、見直した生活スタイル
4月に仕事を始めた直後、毎日勤務できるか不安だと小百合さんに打ち明けた。「3日行けたら気持ちが変わっているかもしれない。その時にまた判断すればいい」と話し合い、小百合さんは美保さんの背中を押した。「彼女が積み重ねたものを私たちは知っている。だから根拠を持って『できるよ』と言えた」
その後、順調に勤務を続けていたが、8月ごろ、発作が毎週末出るように。以前なら心が折れたかもしれない状況だが、美保さんは生活スタイルを見直してみることにした。それまでは日曜日に翌週の昼食用弁当の準備をしていたが、日曜日はゆっくり過ごし、弁当はやめて市販品で済ませる形に変更。すると発作は出なくなった。
自分で医療費を払って自由に車に乗れる 幸せかみしめる
「自分で稼いだお金で医療費を払い、自由に車に乗れる。その幸せをかみしめています」と美保さん。給料は手取りで月に約10万円。以前受給していた生活保護費をぎりぎり上回る。1日8時間勤務で配置換えの可能性もある正規の働き方は自分には合わないと思う。
「とにかく1日、頑張ってみる」
現在の仕事は1年ごとの更新。パニック発作の不安とうつ病も抱えて「先を見据えたら、出てくるのは不安ばかりになってしまう」。だからあえて、将来のことはあまり考えない。「とにかく1日、頑張ってみる」。そういう毎日を重ねている。