映画に感動を焼き付けたカラー現像とタイミング フィルム時代を見つめ続けた Togenスタッフインタビュー
東京現像所は、カラー映画の需要が高まりつつあった1955年、既存の東洋現像所(現IMAGICA)に競合する大規模な現像所として設立され、それから68年にわたって、映画・アニメ・TVを中心として映像の総合ポストプロダクションとして数々の名作を送り出してきた。2023年11月末に、惜しまれつつも全事業を終了する。事業終了した後、DI事業、映像編集事業、アーカイブ事業は、東宝グループに承継され、現在携わっているメンバーは、大半が東宝スタジオに移籍する。 かつてはフィルムで編集・上映が行われてきた。ネガの現像後、監督・カメラマン・タイミングマンが試写を確認し、粗編集、本編集を行う。戻ってきた原盤をクリー二ングしてから焼き付けて、修正を重ね許可が出たものを東京現像所が焼き増しし、全国の映画館に届けていた。ここでは、タイミングを担当していた小泉洋子氏とフィルムのメンテナンス、クリーニングや焼き増しを担当した長 豊氏、田村正人氏に話を伺った。 小泉洋子(映像本部 映像部 アーカイブ1課 フィルムイメージンググループ) 田村正人(映像本部 映像部 アーカイブ1課 フィルムイメージンググループ長 課長) 長 豊 (映像本部 映像部 アーカイブ1課 課長) フィルム現像とタイミング ――「タイミング」とは、どういう仕事になりますか? 小泉 タイミングは、ネガからポジを起こすときにどういった色合いにするかをコントロールする部門になります。ネガを作るときにどういうネガにするのかというのもコントロールしますが、基本的には最終的にポジをどういう上がりにするかをトータルでコントロールする部署になります。 ――撮影されたものが、どういう状態の絵になっているかは、ここで初めて分かるわけですか。 小泉 一番最初に撮影されたネガはここで初めて画がわかります。ネガは基本的にオレンジベースで、反転した画になっています。目視ではどういった上りになっているかの判断が難しいので、カラーアナライザーで色を見ていきます。これがRGB(赤・緑・青)に連動していて、その3つをコントロールすることでどういう色にするかを決めていきます。 ――撮影時には意図から外れる色になることも? 小泉 撮影条件はどうしても一定じゃないと思いますので、同じシーンでも午前中から夕方にかけて撮影されたり、昼のシチュエーションなのにどうしてもスケジュールの関係で夕方に撮影されてしまうこともあります。そうなると「タイミングの方でうまい具合に繋がるようにしてください」といったオーダーもあります。そういうときはここで見て、例えば色を少し抜いていったりします。 ――どのカットの色を変えたかを、どうやって記録するんですか? 小泉 RGBの数値が0から50まであって、この数値を記録したものと、それが何フィート何コマなのかという数値がこの紙のテープに入っています。 ――タイミングデータと呼ばれるものですね。 小泉 これがあれば何回でも同じ色の設定で焼けるんですが、時間が経ってしまったり、生(ポジの種類)が変わってしまったりすることもあるので、旧作なんかですと叩き台という感じで使っています。
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