Age Factory、クラブ的な魅力を取り入れ、ライヴバンドの殻を突き破ってみせたZeppワンマン
4月17日、Age FactoryがZepp DiverCity(TOKYO)にて〈Age Factory presents「Songs」Release Tour 2024〉を開催した。その日の様子をレポートする。
感動の芯をまったく変えないまま、ライヴバンドの殻を見事に突き破ってみせた
新しい時代を作りたいと言っていた。それが本当になっていた。ライヴハウス、バンドシーンの常識みたいなものがことごとく覆されていた。これを観てしまうと他はほとんど色褪せるだろう、とも思った。新しい時代が始まっているのだ。彼らの明確な意思によって。 Zepp DiverCity(TOKYO)は商業施設内にあるため、のんびり店内を見て回る観光客と、会場に向かって一直線に歩く観客の区別がつきやすい。その客層がとにかくイケている。抜群にスタイリッシュ、音楽好きを誇示するように大きいヘッドフォンを首にかけている若者が多数。いかにもロック好きのライヴキッズとは少し違う。普段からクラブで遊んでいそうな子たち、と書けば伝わるだろうか。 新作『Songs』のツアー行程は全5ヵ所と台北のみ。考えてみればこれもライヴキッズに馴染みのものではない。汗をかいて全国各地を巡回する喜びも彼らは当然知っているが、今回は大都市の会場に特別なフロアを用意し、そこに広くから集まってもらうことを選択したのだろう。日々続くライヴツアーというよりは、もっと圧倒的にスペシャルなパーティー。そういう感覚である。 特別なフロアを演出する照明にずっと見惚れていた。メンバーを美しいシルエットとして浮かび上がらせる逆光がメイン。コントラストをはっきり分けた赤と青など、色の使い方もかなり大胆だ。Yonigeの牛丸ありさが登場し「ALICE」を唄ったのは8曲目だが、彼女の姿にスポットが当たることは最後までなかった。こちらもクラブ仕様と書けば伝わるか。とめどない光と影の洪水。「Everynight」で回り出すミラーボールは会場全体に星屑を散りばめていたし、「HIGH WAY BEACH」でフロアを染めたブルーは本当に幻の海のようであった。 総じて、汗臭いライヴハウスより幻想的なクラブのほうがクール、と言っているように読めるのだろう。もちろん実際には優劣などないのだ。ただ、こう書いている私自身の中に、ロックってクラブほどカッコよくはないんだけど……という前提がある。そのことに気づかされたステージでもあった。バンドの音はDJの作るビートよりも効率が悪い、音のレンジも狭い。でもその面倒くささ、時代錯誤な感じも含めてバンドが好きだ。だから多少ダサくてもよしとする。そういったルーザー感覚が、今のAge Factoryにはまったく感じられないのである。 クラブ的な魅力を次々と取り入れながら、バンドは時代錯誤どころか最高の発信だろと胸を張るカリスマ性。さらには、人力でしか出せないこの生音で踊ってくれと笑う余裕もある。増子央人のドラムと西口直人のベース、二人の作るグルーヴが同世代とは比べ物にならないほど引き締まっていることも大きい。曲がガラリと変わったわけではないから鳴っているのはまっすぐなロックだが、それはとても新しく、かつてないほど鮮烈なものに感じられた。 そして、観せ方こそ新しいが、清水英介の歌には今も昔もたまらないロマンと郷愁がある。ハイライトのひとつ「向日葵」で爆発する切なさ、〈夕方5時のサイレン もう帰ろうよ〉と唄う「TONBO」のセンチメンタリズム。切なさに胸を揺さぶられ、懐かしい夢を見ながら、この気持ちを誰かと共有したいと願うのは、どれだけ時代が進んでも変わらない人間の人間らしさだろう。感動の芯をまったく変えないまま、『Songs』以降のAge Factoryはライヴバンドの殻を見事に突き破ってみせた。マジで、こんなにカッコいいものを観たのはいつ以来か。 すごいものを観たと思うが、これがピークではなく、まだまだ上にいけると思えるところが一番空恐ろしい。この日発表された次回のワンマンは、9月1日、日比谷野外公園大音楽堂である。 【SET LIST】 01 Blood in blue 02 Shadow 03 Party night in summer dream 04 CLOSE EYE 05 RIVER 06 Everynight 07 Light off 08 ALICE feat.牛丸ありさ 09 OVER 10 HIGH WAY BEACH 11 Lonely star 12 向日葵 13 She is gone 14 Dance all night my friends 15 Merry go round 16 1994 17 Feel like shit today 18 I guess so 19 TONBO 20 Hallelujah 21 SONGS ENCORE 22 See you in my dream 23 GOLD
石井恵梨子