一生懸命残業してるのに、会社が「無断残業だ」など言って残業代を払ってくれません…タダ働きするしかないのでしょうか?
会社の残業代支払い拒否にはさまざまなパターンがあります。例えば「無断残業だ」「だらだら残業だ」「時間外上限枠を超えている」「見習い期間中だから残業代は出せない」「自発的な研修の時間だ」といったものです。これらの会社の理屈には、それぞれ問題があることを解説します。
労働契約・労働時間の原則を確認しよう
はじめに原則を確認しましょう。 労働者(社員)は会社に労務を提供し、対価として賃金を得ます(労働契約法第2条1項など)。労働時間は会社の指揮命令のもとで労働した時間です。 労働基準法では、週40時間、1日8時間という「法定労働時間」、および週1日以上の休日付与が定められています。法定労働時間を超えた残業や休日労働については、会社は割増賃金を払うことが義務づけられています(労働基準法36条、37条)。 それでも、会社が割増賃金を払わない理屈とはどのようなものでしょうか。一つひとつ確認してみましょう。
「無断残業だ」「自発的な残業だ」と割増賃金が支払われない
「就業規則で、残業をするには上司の許可が必要と定めている。無許可の残業は、社員が勝手に自発的にしていたものだ」というパターンです。 たとえ残業許可手続きを会社が定めていても「実際には黙示の承認があった(見て見ぬふりをしていた)」こともあるでしょう。「時間内ではとても片付かない業務量だった」こともあるかもしれません。そのような場合、会社が残業を認めていたと主張することはじゅうぶん可能でしょう。 次のような行政解釈もあります。 「黙示の指示によって行った時間外労働に対する時間外手当の支払い。 労働者が使用者の明白な超過勤務の指示により、または使用者の具体的に指示した仕事が、客観的にみて正規の勤務時間内ではなされ得ないと認められる場合の如く、超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間を超えて勤務した場合には、時間外労働となる。」 【S25.9.14基収2983号】
「申告できる時間外労働の上限枠を超えている」と割増賃金が支払われない
残業時間として申告できる上限を設ける会社もよく見受けられます。このような扱いは厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」で禁止されています 。 「使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならない」