2025年はおもしろおかしい10年の始まりか、それとも地獄の10年か?多極化する世界を生き抜く人、沈没する人
■ 年収1000万円は勝ち組と言えるか? 藤野:それに対して、以前は勝ち組とされていた年収1000万円くらいのサラリーマンはどうかというと、不動産や株を持っていなければ、年収1000万円が3000万円になることはなかなかありませんよね。1000万円の人が頑張って、1100万円とか1200万円になるのがせいぜいだと思います。 つまり「超勝ち組」の勝ち方がべらぼうになる一方で、大したことがない勝ち組がいる。ものすごい「多極化」が起きています。 ──資産を持つ人々からすれば、何もしていないのに勝手に資産が増えたという感覚でしょうね。 藤野:また、「負け組」と言われる人の中でも、徹底的に負けた、非常に生活が苦しい層が出てきています。 これらの人たちは、社会的に交わることがなく、お互いの姿が見えていないので、政治やメディアも多極化していきます。 生活が苦しい人たちばかり取り上げるメディアがある一方で、経済の動きだけを取り上げるメディアがある。でも、両者は交わらないので話が噛み合わない。 「こんなに世の中悪くなって、こんなに苦しい人がいて、自民党政治は最悪だ」と憤る人がいる一方、すごく上手くいっている人は「何を言っているんだ、いい時代じゃないか」となる。同じ日本にいても、違う風景が映っているのです。 その結果、政治的・社会的にどうなるかというと、中間層が完全に崩壊してしまいます。 ──そうなると、合意形成が難しくなっていきますよね。 藤野:そうですね。多極化に合わせて、政党も多党化しています。
■ 多極化する世界で社会的調和を保つには? 藤野:自民党や立憲民主党のような大きな政党が支持を失い、共産党や公明党は支持層が高齢化している中で、「参政党」や「保守党」などの新しい政党ができ、すごい左とすごい右の政党が出てくる。その始まりが前回の衆議院選挙だったのでしょう。 ただし、これは日本独特のことではなくて、世界中で起こっていることです。 実際にヨーロッパの政権を見ると、第一政党であっても支持率が20~25%ほどしかなく、多極化しています。ポピュリズム政党、キリスト教に根差している政党、あとはかなりの左翼やかなりの右翼、中道政党などがあり、それらが連立を組みながら、なんとか政権を回しているのが現状です。 ◎【2024年を振り返る・フランス編】「三国志」状態に陥ったフランス、マクロン大統領はフランスに何を残すのか? (JBpress) ◎【2024年を振り返る・ドイツ編】政情不安・景気低迷・産業空洞化の三重苦に直面するドイツ、もはやディストピアか(JBpress) 米国も二大政党というけれども、内実は細かく割れていて、たまたま共和党のトランプが幅広い意見を集めたということだと思います。 これからは多極化・多党化を受け入れざるを得ず、同じようなマス(多数派)を集めることはもうできないでしょう。 なので「マス・メディア」はもうなくなり、すべてが「ミニ・メディア」になる。そうした細かい意見を幅広く議論する場がないまま、ネットメディアの中にミニメディアが乱立していく気がしますね。昔から考えると、それは変な世界に見えるかもしれません。 そうした中で社会的な調和を保つには、違う立場・違う考えの人をリスペクトしてゆるやかに受け入れる、ダイバーシティ&インクルージョンのようなリテラシーが重要になるのではないでしょうか?