政策活動費って何? 不透明なカネの問題点を整理
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件を受け、政党から政治家個人に支出される「政策活動費」が注目を集めている。自民党では例年十数億円が支出されるのに、政治家が何に使ったのかは明らかにされていない。議員特権とも言える不透明なカネの問題点を整理した。 【画像】自民党本部に対し、甘利氏が発行した2019年の政策活動費の領収書
Q そもそも政策活動費ってなに?
A 政党から党幹部に配られる政治資金です。自民党が突出して多く、長く幹事長を務めた二階俊博氏は在任約5年間で約47億円を受け取っています。ただ、その使い道は不明なまま。政治資金規正法は、政党が誰にいついくら渡したのかを収支報告書に記載することを義務付けていますが、受け取った政治家には収支報告の義務を求める規定がないためです。
Q 選挙ではどんなことに使うのかな?
A 自民党の幹事長経験者は中国新聞の取材に、激戦区の党公認候補の支援のために「資金投入をすることもありうる」と明かしています。また、2019年の参院選当時に自民党選挙対策委員長だった甘利明氏が広島、宮城の両選挙区で党公認候補側に現金各100万円を陣中見舞いとして渡していたことが分かっています。いずれも収支報告書に記載がなく、政策活動費から出た現金と疑われています。
Q 使途が全く分からないんですか。
A 自民党は「党勢拡大や政策立案、調査研究を行うため」としていますが、実際の使途は明らかにしていません。金額を見ると、国政選挙の年に増えているので、選挙に使われている可能性は高いと思います。
Q 政策活動費の問題が最近になって注目されているのはなぜ?
A 自民党派閥の裏金事件で「言い訳」に使われたからです。政治資金パーティーの収入の一部を裏金にしていた一部議員が「政策活動費と認識していた」などと釈明したことで、注目されるようになりました
Q 他の政党には政策活動費はないの?
A あります。「組織活動費」などとも呼ばれており、毎年、各政党の収支報告書で党幹部らへの支出を確認できます。ただ、政党には毎年総額300億円もの政党交付金が税金から配分されている中で、巨額の不透明な支出があることに批判の声があります。野党や公明党から廃止や使い道の公開を求める声が出ていますが、岸田文雄首相は「政治活動の自由と密接に関わる問題だ」として消極的です。
Q 使途を公開すると、政治活動の自由は侵害されるの?
A 憲法学者に聞くと、「政治家を拘束したり、自由にものを言えなくしたりするのが直接的な制約であって、政治資金の使途公開が自由な政治活動を制約するとはいえない」と指摘されました。政治活動の制約につながったとしても、政治資金の浄化という目的を考えれば憲法上許容されるとの見解でした。 共同通信社の1月の世論調査では「使途公開が必要」とする回答は89・3%に上りました。国民の不信を払拭するためにも、首相には「ブラックボックス」とも言える政策活動費に切り込む姿勢が求められます。
中国新聞社