日本製鉄・橋本英二会長が独占告白 USスチール買収は「揉めるのはわかっていたけれど、千載一遇のチャンス。だから勝負に出た」
日本製鉄が2兆円という巨額資金を投じて進めようとしている米鉄鋼大手・USスチールの買収が正念場を迎えている。現地メディアは、バイデン大統領が買収を阻止する方針だと報じた。2023年12月に日鉄の社長として買収計画を発表し、その実現に邁進してきたのが橋本英二氏(現・会長)だ。米国の政治判断にも左右される巨額買収に乗り出したのはなぜなのか。 【写真】日本製鉄による買収支持を表明するUSスチール社の従業員
次期経団連会長の最有力候補とされ、いま日本の経営者のなかで最も注目を集める存在である橋本氏を、ノンフィクション作家・広野真嗣氏が独占インタビューした(週刊ポスト12月16日発売号に掲載)。 米製造業の象徴的な企業ともいわれるUSスチールだが、日本製鉄による買収には全米鉄鋼労組(USW)が一貫して反対してきた。USWは約120万の組織票を持つゆえ、米国大統領選を前にバイデン大統領は「米国内で所有、運営される米国の鉄鋼企業であり続けることが不可欠」との声明を発表し、トランプ氏も「私なら即座に阻止する。絶対にだ」と発言していた。 米国の政争に巻き込まれるリスクは買収計画発表前から当然、わかっていたはずだが、11月末にインタビューに応じた橋本氏は、USスチールが売りに出た時のことを振り返って、「揉めるのはわかっていたけれど、これは30年、いや50年待っても出てこない千載一遇のチャンス。だから勝負に出た」と語っている。 買収計画は現在、米国の安全保障へのリスクを評価する対米外国投資委員会(CFIUS)が審査を行なっており、12月23日が審査期限とされる。審査の結果を踏まえ、バイデン大統領は買収阻止に動くか判断することとなる。 まさに正念場だが、1979年に日鉄(当時・新日本製鐵)へ入社した橋本氏は、そのキャリアのなかで、企業が成長にチャレンジすることの重要性に気づき、そのためにグローバルな事業展開が必要と考えるようになったと明かしている。 2019年4月に社長に就任してからは、海外での大勝負に出るために必要な改革も進めてきた。2020年3月期には過去最大の4300億円の最終赤字を計上していたが、2023年3月期は2年連続となる過去最高益を更新。V字回復を果たした。そうして挑んだ巨額買収は、実を結ぶのか――。 なお、「マネーポストWEB」では、橋本会長の独占告白を先行全文公開している。USスチール買収に懸ける思いや海外に打って出て成長にチャレンジすることが必要な理由が語られ、そうした考えを抱く原点でもある貧しかった少年時代の思いまでを明かしている。
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