純白の繭の“じゅうたん” 鴨川の養蚕農家で出荷作業(千葉県)
鴨川市貝渚の養蚕農家、内記朗さん(77)方で、繭の生産がピークを迎え21日、出荷に向けた作業が行われた。約6万頭の蚕が作り上げた純白の繭が、作業場いっぱいに広げられた。 繭の生産は、春と秋に行われており、9月21日に体長1センチほどの蚕の幼虫を仕入れ、畑で育てた桑の葉を与えて飼育。多い日で1日に約500キロを食べるため、「桑の収穫が大変」だという。 脱皮を繰り返し、今月8日から糸を吐き出し始めた蚕は、「まぶし」と呼ばれる格子状の枠の中に1頭ずつ入り、約2日間で自分の体を包み込む繭を作った。出荷前の作業場には約80キロの繭が広げられ、内記さんが汚れがないかなどを確認していた。
今年は暖かい日が多く、桑の生育が良好で、夏にも生産し30キロほどを出荷。今回は、10月上旬に気温が高かったため、糸を吐き始めるのが計画より早まったが、「病気もあまり出ず、無事出荷できてよかった」と話す。内記さんの繭は、県内で生糸にして、三味線の糸(弦)などに加工されるという。 農林水産省によると、養蚕農家の高齢化や後継者不足により、昨年の全国の養蚕農家数と繭生産量は共に、10年前(2013年)の約3割まで減少。内記さんが養蚕を始めた1978(昭和53)年ごろは、鴨川市内だけでも5軒あったが、現在は安房では内記さんのみ、県内でも3軒だけだという。 内記さんは「若い人たちにも養蚕のことを知ってもらい、後継者を育てていきたい」と話している。 (安藤沙織)