綾田俊樹、国民的 “おじいさん俳優”は「最近、やっと実年齢が追いついてきた。今は本物、昔には負けないよ」
ドラマ『深夜食堂』(2009年、MBS)ではゲイの小寿々を哀愁がありながらもコミカルに演じるなど、綾田はバイプレーヤーとして人気作に欠かせない存在だ。 「『深夜食堂』は松岡錠司監督だったんですが、セットにものすごくこだわっていたんですよ。所沢の体育館を借りて、そこに飲み屋街を造る。提灯や映らないであろうポスターまで作り込んでいて。それができるって愛情ですよね。いまだに『続編を期待しています』と言われる作品です」 数多くの作品に出演した綾田に印象に残っている役を聞くと、「昔からじじいの役しかしていないんだよ」と笑う。 「それこそ自由劇場のとき、20歳そこそこで初めてもらった大きな役は吉田日出子のおじいさん役だった。きっと昔から年寄りくさい顔をしていたんだろうな。 なんやかんやでじじい役も50年近くやっているけど、最近はやっと実年齢が追いついてきた感じ。当たり前ですが、今は本物なので、昔には負けないと思っています」 放送中のドラマ『闇バイト家族』(テレビ東京系)でも、とある事情からニセ家族になる祖父を演じている。 「このドラマはキャストが魅力的。鈴鹿央士、山本舞香といった若者と、光石研、麻生祐未、吹越満らベテランとのバランスが絶妙なんですよ。 現場では光石が素晴らしい芝居を見せつつ、吹越がピリッと締めるので、若者2人も楽しそう。作品で大事なのはチームワークなので、それがあるいい作品です」 最後に人生を変えた作品、人物について聞くと、少し悩んで「作品ではないけど、先代の中村鴈治郎、いや柄本明かな」と明かした。 「柄本っちゃんと出会ったからいまだに演劇をやっているわけだし。ベンガルもそうだけど、僕にとってはいつまでも師匠のような存在。年齢なんて関係ないですね。 これはいつもだけど、僕が芝居をしたら呼んでもないのに柄本っちゃんは来るの。この前も『柄本さん来てますよ』と教えられて……。もう青ざめちゃって。やっぱりあの目で観られたら緊張します」 観にきても演技については話さないというが、「ああ、一度だけ柄本っちゃんからほめられたことがある」と続けた。 「僕が無言で待っている芝居をしていたら、それがいいって。あれは嬉しかったな」 出会って50年以上たっても柄本とベンガルとの関係は変わらないという。 「この2人と出会えたことは本当によかった。僕は人にしても作品にしても “出会い運” はものすごくあるんですよ」 そう得意げに話し、綾田は焼酎をクイッと飲みほした。 あやたとしき 1950年6月13日生まれ 奈良県出身 自由劇場を経て、1976年に柄本明、ベンガルと共に劇団東京乾電池を結成。『深夜食堂』シリーズ(MBS)や大河ドラマ『真田丸』(2016年、NHK)などヒット作に出演し、バイプレーヤーとして活躍。また舞台の演出なども手がける。現在ドラマ『闇バイト家族』(テレビ東京系)に出演中 写真・伊東武志
週刊FLASH 2024年3月5日号