「老兵は消え去るのみ」尾車親方が相撲協会退職へ 元大関・琴風70歳任期満了待たず67歳で
大相撲の尾車親方(67、元大関・琴風)が日本相撲協会を退職することが7日、明らかになった。かねて「後進に道を譲るべき。老兵は消え去るのみ」という希望を持っていて、70歳の再雇用の任期満了を待たずに決意。今月11日にも協会に退職届を提出することになった。「尾車」の名跡は本家でもある佐渡ケ嶽部屋に返納する。 【写真】伝家の宝刀がぶり寄りで朝潮を圧倒!賜杯を手にした琴風 迷いはなかった。2022年に尾車部屋を閉鎖して、協会と再雇用契約を結んでからも退職のタイミングを探っていた。「後悔はないですよ。やり切ったという感じです」と同親方は親しい知人にもらしていた。 まさに潮の満ち引きのような相撲人生でもあった。左膝の大けがのため関脇から幕下に転落。不屈の精神と代名詞にもなった「がぶり寄り」で大関に昇進した。引退後は尾車部屋を創設。理事としても協会運営に尽力してきたが、2012年4月には巡業先で倒れて頸髄(けいずい)捻挫の重傷を負った。一時は首から下がマヒして寝たきりの状態に陥ったこともあった。 懸命のリハビリを経て復帰してからは“ナンバー2”の事業部長として八角理事長(元横綱・北勝海)をサポート。コンプライアンス部長としても数々の難問に取り組んできた。 「尾車」という名跡に関しては「本家からいただいた名跡。本家にお返しするのが筋だと思う」という信念で佐渡ケ嶽部屋に戻すことも決めた。「回り道」の連続でもあったが、最後は信念を貫く「一本道」で53年の相撲人生に幕を引く。 ◆尾車 浩一(おぐるま・こういち)本名・中山浩一。元大関・琴風。1957年4月26日、三重・津市生まれ。67歳。71年名古屋場所、佐渡ケ嶽部屋から初土俵。75年九州場所、新十両。77年初場所で新入幕。78年初場所で新関脇も、その後は度重なる左膝の大けがで幕下に転落。懸命のリハビリで復帰し、初優勝した81年秋場所後に大関昇進。85年九州場所で引退。優勝2回。得意は左四つ、寄り。引退後は年寄・尾車を襲名し、87年3月に尾車部屋創設。豪風、嘉風らを育てる。理事として巡業、事業部長などの要職を歴任した。
報知新聞社