「何でも買い取る」ターゲットは80歳以上の女性? “悪質”訪問買取業者の強引手口へ対抗策は【弁護士解説】
法が禁じる「飛び込み勧誘」など横行か
こうした悪質業者によるトラブルの中には、特定商取引法違反の疑いがある行為が含まれている。 特定商取引法はそもそも、訪問購入業者による飛び込み勧誘を禁止しており(58条の6-1項)、訪問する際にも、勧誘に先立って、氏名や買い取る物品などを明示するよう定めている(58条の5)。 しかし、国民生活センターに寄せられた相談のなかには、「自宅に1人で居る時、突然購入業者から訪問を受けた」など法令違反が疑われるケースが多く見られるという。 また、同法では、訪問購入を断った人への再勧誘を禁止している(58条の6-3項)にもかかわらず、「業者から何度も電話がかかってくる」といった相談も寄せられているとのことだ。 これらの訪問業者による悪質な手口について、消費者問題に詳しい海嶋文章弁護士は「是正指示や業務停止・禁止命令の対象になり得る」と解説する。 「該当する特定商取引法の条項に違反した場合は、主務大臣から問題となる事業者に対して、是正指示が出ることがあります(58条の12)。 さらに悪質である場合は、業務停止命令や、事業者の役員に対する業務禁止命令が出る可能性もあります(58条の13、58条の13の2)。 そして、仮に、事業者やその役員が、是正指示や業務停止命令、業務禁止命令を遵守しなかった場合には、刑事罰の対象になります(70条、71条)」(海嶋弁護士)
告発や証明「難しい」
ではなぜ、罰則があるにもかかわらず、違反を犯す悪質な業者が後を絶たないのだろうか。 「訪問購入の対象となった方が、訪問してきた事業者の名前や訪問者の氏名を記憶しておらず、告発が難しいことが挙げられます。 また、仮に告発できたとしても、録音などの証拠がないと、特定商取引法に違反する行為があったと証明するのは、簡単ではありません。 悪質業者が違反行為に及んでいる背景には、こうした告発や証明の難しさがあるのではないでしょうか」(海嶋弁護士) 海嶋弁護士は、特定商取引法以外にも、相談事例にあった下記のようなケースについて、法的な問題になりうると指摘する。 ・「何でも買い取る」と勧誘しておきながら、ほかの物品には目もくれず指輪を売るよう強引に迫った ・判断力の低下した高齢者から、相場より安い価格で物品を買い取るなど、不利な契約を迫った 「これらの行為は、民事の観点では、詐欺や脅迫にあたりうるもので、契約を取り消せる場合があります。 刑事の観点でも、物品が不適正な対価で業者に渡った場合には、詐欺罪や恐喝罪に該当する可能性があるでしょう」(海嶋弁護士)
「家族間で普段からコミュニケーションを」
最後に、海嶋弁護士は訪問購入トラブルの被害を受けた人が取るべき対応や、被害を防ぐための対策について、次のようにアドバイスした。 「強引に買い取られた物品を取り戻したい、業者を捕まえてほしい、と警察に依頼する場合には、事業者が提示してきた名刺や書類、会話を録音したデータなど、事業者の特定ができる証拠を用意しておく必要があります。 また、高齢な女性が被害に遭いやすいとのことですから、そうした方が1人で訪問業者との契約を締結してしまうことのないよう、離れて暮らしている場合も、家族間で普段からコミュニケーションを取ることをおすすめします」
弁護士JP編集部