センバツ2024 注目選手/下 星稜 父子でつかんだ大舞台 憧れの存在、共に練習 中島幹大 /福井
昨秋の北信越地区高校野球大会決勝で延長十回にサヨナラ打を放った星稜(石川)の中島幹大(かんた)(2年)。父の大悟さん(47)は同校OBで、社会人野球・伏木海陸運送(富山県高岡市)の元監督だ。幼い頃からその背中を追い続け、星稜野球部を目指してきた。入部後のけがや新型コロナウイルス禍を乗り越え、父子でつかんだ憧れの甲子園の舞台。「チームを日本一に」と心に誓う。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 中島は、大悟さんの影響で物心つかない頃からボールと戯れ、小学2年で地元の少年野球チームに入団した。伏木海陸の試合もいつも家族そろって観戦。都市対抗野球大会でも東京ドームのスタンドから父に声援を送った。その熱い姿はいつしか憧れの存在となり、星稜中に進学。以来、朝5~6時に起床して高岡市から通学を続けている。 しかし、2019年の中学入学後すぐに腰椎(ようつい)分離症となり、半年間も練習できない日が続いた。10月ごろにようやく練習に参加できたが、翌年1月から新型コロナ禍で部活動が中止に。もどかしい日が続いた。そんな中、心の支えとなったのが、19年夏の甲子園で星稜が準優勝を成し遂げたことだった。エース・奥川恭伸投手(22)=ヤクルト=が活躍した大会の全試合をスタンドで観戦し校歌を合唱。「自分も必ずこの舞台に立つ」と決意した。 部活がない間は、自主学習後に伏木海陸の練習に参加して社会人のスピード感にふれ、選手や指導陣に守備や打撃スイングなどのアドバイスを受けた。部活再開後はひたすら厳しい練習に耐え、通常は午後8時ごろになる帰宅後も、大悟さんとともに県内のバッティングセンターで振り込んだ。 その努力が実り、昨秋の石川県大会からベンチ入り。北信越大会では両親、両祖父母がスタンドで見守る中、決勝のサヨナラ打を放った。「本当にうれしかった。頑張ってよかった」と笑顔を見せる。 波に乗って明治神宮大会でも優勝し、新チームは昨秋の公式戦13試合で負けなしだった。中島はその強さの要因を「チームワークがよく、一人一人が自分の役割をよく分かっている」と分析する。練習中も選手同士で教え合ったり、練習後も一緒に自主練習したりする仲だという。チームメートには、星稜中時代に全国大会で共に戦い、2度優勝した同じ高岡市出身の専徒大和(2年)や、小学6年時に見た夏の甲子園100回記念大会の開幕試合で、始球式をした同高OB・松井秀喜さん(49)をエスコートした山下暖生(2年)もいる。仲良くないはずがない。 自身初の甲子園は、開幕日の第2試合(18日午後1時)で田辺(和歌山)と対戦する。「あこがれの舞台で野球ができるんだという不思議な気持ち。ここぞという時に必ず1本打ち、(神宮大会に続き)もう一度日本一を目指す」と力強く宣言する。秋以降ほとんどの公式戦を観戦してきた大悟さんも「自分と同じユニホームを息子も着て、甲子園に立つことがうれしい限り。甲子園を思い切り全身で感じ取ってきてほしい」とエールを送る。【青山郁子】