鳴海唯が『Eye Love You』など躍進の2024年を経て目指すもの 「正解がないからこそ楽しい」
大反響だった『Eye Love You』と『あのクズ』
ーー特に『Eye Love You』と『あのクズを殴ってやりたいんだ』の2作品は、どちらも人気のTBS火曜22時枠のドラマで注目度も高かったと思います。鳴海さんは視聴者からの反響をどのように受け止めていましたか? 鳴海:民放ドラマに出演するのは『Eye Love You』が初めてだったんですが、こんなにもタイムリーに視聴者さんの反応が届くことにまずは驚きました。それが現場の士気にも繋がっていて、やっぱり反応が良いと、みんな「おっしゃー!」ってやる気になるんですよね。今まではすでに撮り切ったものを出すことが多かったので、同時進行で視聴者さんと一緒に作り上げているような感覚が新鮮で楽しかったです。あと、今までで一番友人から感想をもらったかもしれません。それも私が出演しているからではなく、純粋にドラマの内容に興味を持って観てくれた人が多くて。それはテレビの力もありますが、TBS火曜ドラマが注目されている証拠だと思うので、すごくありがたい環境に置いてもらっているってことを実感しながら撮影していました。 ーーリアルサウンド映画部でも『Eye Love You』に関連する記事を出すたびにかなりの反響があり、2024年内に放送されたドラマの中でも特にファンダムが盛り上がった作品だったと感じます。 鳴海:私も別の作品で地方ロケに行った時に、ロケ地を貸してくださる方から「仁科ちゃん(役名)だよね?」って言われてびっくりしました。そんなふうに声をかけてもらうこと自体が初めてだったので、本当にたくさんの方に観ていただけているんだなということを実感して嬉しかったです。Netflixでも配信されているので、日本のみならず、韓国をはじめ世界中の方が観てくださっているみたいで。今年6月に友人がいるカナダに一人で訪れたんですが、そこでも『Eye Love You』を観てるって方に出会いました。
“正解”が分からないからこその役者の楽しさ
ーー鳴海さんご自身は、俳優の仕事を始める前から連ドラはお好きでしたか? 鳴海:私は子供の頃からテレビっ子で、特に小~中学生の頃は齧り付くようにドラマを観てました。『花より男子』(TBS系)、『ブザー・ビート~崖っぷちのヒーロー~』(フジテレビ系)、『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系)、『大切なことはすべて君が教えてくれた』(フジテレビ系)……などなどここでは挙げきれないほど、いわゆる月9や金曜ドラマをたくさん観ていましたし、翌日学校に行くとその話題で持ちきりなんです。当時はみんな同じものを観ていて、観てる前提で話が進んでいく。私が子供の頃は、そういう時代でした。だから、その世界に自分が今いるということに感慨深い気持ちになります。 ーー『Eye Love You』では、鳴海さんの流暢な韓国語も話題になっていました。 鳴海:実際はネイティブのな方が聞いたら「頑張ってるな」くらいのレベルだと思うのですが、私が演じた仁科ちゃんがニュートラルなキャラクターだったこともあって、視聴者の皆さんにはナチュラルに韓国語が喋れる人に映ったんだと思います。私自身は必死で、撮影前日に「韓国語の台詞を少し変えます」と言われた日には「ヤバいヤバい」って内心焦っていました(笑)。 ーー相当勉強されたんだろうなと思います。撮影が終わってしばらく経ちますが、まだ韓国語は喋れますか? 鳴海:今でも語学学習アプリで韓国語の勉強は続けていて、もうすぐ1年連続記録を達成します。身になっているのかどうかは分からないですが、とりあえず毎日触れて、またジョンヒョプさんと共演したり、他の韓国の俳優さんと一緒にお仕事をしたりする機会があったら、簡単なコミュニケーションは取れるくらいの語学力は持っておきたいなって。 ーー日韓共同制作の映像作品もどんどん増えていますし、 Netflixで配信されている『Eye Love You』で韓国語を喋っている鳴海さんの姿が目に留まって、向こうの作品からオファーが来る可能性もありそうですね。 鳴海:そういう未来があったらいいなと思います。最近は英会話のレッスンもオンラインで受けていて、いろんな国の方とお話しするんですが、ドラマや映画の話になると「最近はアジアの作品がきてるよね」ってみんな口を揃えて言うんです。製作されたのはアメリカですが、日本を舞台にした『SHOGUN 将軍』(ディズニープラス)の快挙で日本の作品に対する注目度も上がっているように感じます。だから、どんどんいろんな作品に出演していきたいですし、今おっしゃったように国の垣根を超えた作品も増えてきているので、いつでも海外のスタッフさんともコミュニケーションを取れる状態にしておきたいんです。 ーーそうやって語学の勉強をされていたり、現地に友人がいるとはいえ、カナダに一人でご旅行に行かれたり、行動力が素晴らしいですね。鳴海さんのお芝居には嘘がないように感じていたんですが、そういうところにも理由があるんじゃなかと思いました。『あのクズ』で演じられたさや美もご自身とは全く違う人生を歩んできた役だと思いますが、彼女がこれまで経験した苦労が見えてくるようで。そういった未知の役を演じる時のスタンスについて聞かせてください。 鳴海:台本に書かれてあることは、その役の人生のほんの一部分に過ぎず、実際はそれ以外にもたくさん経験していることがあって、そこをどれだけお芝居で埋めていけるかで役の説得力が変わってくると思っています。とは言いつつも、自分が経験していないことを想像して、自分で作って実践するというのは本当に難しい作業で、未だに私も正解はわかっていません。『わかっていても the shapes of love』でも役作りにはかなり苦戦しました。だけど、自分の人生とは遠ければ遠いほど、必然的に役と向き合う時間も増えて、演じ終えた後には何にも代えがたいほどの達成感があるんです。もちろん終わってから、ああすれば良かったなって振り返ることもありますし、それには正解がないから苦しいんですが、正解がないからこそ、終わりがなくて楽しいなとも思います。それがもしかしたら、この仕事を続けている理由なのかもしれないですね。 ーー鳴海さんが共演されてきた先輩方も何十年とその作業を続けているわけですもんね。 鳴海:きっと共演してきた先輩方は私が今話した苦労なんかはゆうに超えていて、もっと違う次元の悩みがあるんだろうなって勝手に想像しています。だから、先輩方がお話しているとつい前のめりになって聞いちゃって、「そんな真剣に聞かないでよ」って言われるんですが(笑)、何気なくお話しされていることでも、私にとっては宝物になるような言葉がポロっと出てきたりするので、聞き逃したくないんです。 ーーそんな姿勢が今年の活躍に繋がっているんだなと思います。そんな1年も、もうすぐ終わりますが、2025年は鳴海さんの中でどのようなことを目標にしていきたいですか? 鳴海:ここまでの2年間を振り返ってみると、2023年は自分の苦手なこと、逆に2024年は自分の得意なことが分かり始めてきた年だったんです。その上で、これから苦手なことは避けて、得意なこと、あるいは好きなことを追求していくってやり方もあるとは思うんですが、私は苦手なことにもまた向き合いたいんですよね。もちろん、人生において幸せな選択をすることは大事だと思いますし、私も「これがやりたいです」って確信を持って言えることが見つかったら、そっちに突き進んでいきたいんですが、今はまだ自分が苦手だと思っていることの中からも“好き”を見つけられる気がしていて。だから、2025年もそこから逃げずに向き合って、その先に生まれる何かを模索し続けていきたいと思います。 (取材=石井達也)
リアルサウンド編集部