気象庁が豪雨災害対策で新方針 危険度分布とハザードマップ重ね合わせ
大雨によって、いままさに洪水や土砂災害などの災害発生の危険度が高まっていることを示す「危険度分布」と、地形の特徴などを踏まえてどの地域でどのような災害が発生するかを予測する「ハザードマップ」。気象庁はこのほど、この2つを重ね合わせた地図情報を提供することを決めた。 【図】気象庁「危険度分布」土砂災害、浸水害、洪水、雨の様子 今年7月の西日本豪雨で甚大な被害が出たことを受け、気象庁は大雨警報や土砂災害警戒情報といった「防災気象情報」のより良い伝え方について検討する有識者会議を設置。この会議での検討結果を踏まえて、今後推進すべき取り組みがとりまとめられたが、その中でも中心となる改善策の一つとなる。
使いにくい気象庁の防災気象情報
西日本豪雨で、気象庁は防災気象情報を段階的に発表するとともに、早い段階から記者会見を開き、警戒を呼び掛けた。また、多くの自治体もこうした気象庁からの情報を受け、避難勧告等の避難の呼びかけを行っていた。しかし、それが必ずしも住民の避難行動につながらず、甚大な被害が発生したとされる。 事前の情報が必ずしも避難に結びつかない理由として、気象庁などは「気象庁などが伝えたい危機感が感じてもらえていない」「防災気象情報を活用しようとしても、使いにくい」「防災情報が数多くあって、関連が分かりにくい」「特別警報の意味が理解されていない」──などと課題を整理。 その中で、さらに具体的な課題として、リアルタイムの危険度を示す「危険度分布」と、もともと地域が持っている災害のリスクを示す「ハザードマップ」をインターネットで見ようとした場合、別々のページにアクセスしないといけない状況を問題視する声が出ていた。
高まる災害リスクと地域の危険性を一つのサイトで
気象庁では、こうした問題を解決するため、危険度分布とハザードマップを一つのサイトで見られるようにする方針を表明。来年度以降、国土交通省や気象庁のホームページなどで情報提供を開始する予定だという。気象庁の担当者は、「危険度分布とハザードマップの2つを重ね合わせることで、市町村などは住民に対して避難の呼びかけを行いやすくなるし、住民はどこに避難すればよいのかわかりやすくなる」と期待している。 気象庁は、このほかの豪雨災害対策として、▽土砂災害の危険度分布を現在の5キロ四方から1キロ四方に高解像度化することで、これまで必ずしも避難が必要ではない住民に避難の必要性を伝えていた状況を改善する▽洪水や土砂災害の危険度が上昇した場合に、希望者向けに通知するサービスを開始する▽地方気象台の職員にそれぞれ担当自治体を割りふって、地域の実情に応じて気象情報の開設を行う「あなたの町の予報官」を新設する──などの新方針を示した。いずれも来年度中までには始める予定だという。 飯田和樹・ライター/ジャーナリスト(自然災害・防災)