登山計画書の義務化スタート「半数以上は提出」もまだ不十分
長野県内の指定登山道で今年7月から義務付けられた「登山計画書」の届け出は、7、8月の2か月間で約20万人になったことが県観光部のまとめで15日、分かりました。長野県内の山岳には夏季を中心に年間70万人前後の登山者が訪れており、県は届け出をさらに徹底する必要があると見て啓発活動を進める方針です。 【写真】多発する冬山遭難 遭難は「出発前」の自宅から始まっている?
届け出件数は北アルプスが最多
長野県は遭難防止のため昨年制定した「長野県登山安全条例」で今年7月1日から県内160以上の「指定登山道」で登山計画書の提出を義務付けました(罰則なし)。指定登山道は遭難発生のおそれが高い個所で、県内の志賀・苗場、戸隠、上信国境、北アルプス、八ケ岳、奥秩父、御嶽山、中央アルプス、南アルプスの9山域にあります。 罰則を設けなかった理由について阿部守一知事は「論議したが、罰則より計画書を出しやすい環境を整えることが適切だと考えた」と説明しています。
観光部によると、7月の届出件数は2万9820件、届出登山者数は9万4775人。8月は同4万3077件、同10万6964人。7~8月の合計は届出件数7万2897件、届出登山者数20万1739人でした。8月の届け出1件当たりの平均人数は2・5人です。 届け出にはさまざまな方法があり、登山の際に提出する「登山ポスト」によるものが7~8月の間で6万1790件で、全体の77%と最多。ほかに県が受け付けている電子申請や郵送のほか、県が今年活用協定を結んだ全国ネットの「コンパス」などによる受け付けもあります。 山域別の計画書届出件数は、穂高連峰などが人気の北アルプスが7~8月で3万5792件、55・2%と最多。次いで八ケ岳連峰15・7%、中央アルプス13・3%、、南アルプス7・3%などです。
携帯電話への「過信」は禁物
県などによると長野県内の登山者数は2011年に約64万人、13年に約73万人と急増傾向。最近は中高年や女性の間でブームともいわれます。一方で遭難も13年が300件(うち死亡・行方不明74人)、14年も272件と高水準です。条例による登山計画書の提出義務は遭難防止対策の一環です。 届出状況について県観光部山岳高原観光課は「全体の登山者で見れば半数以上は届け出ていると考えるが、さらに啓発活動を続けたい」とし、完全実施は今後の課題です。特に過去の多くの遭難で登山計画書の提出がわずかだった例もあったため、届け出の徹底を呼びかけます。 計画書を出さない理由として、緊急時の携帯電話への依存があると見られています。しかし「届け出をしないで登山中に携帯電話を持っている本人が疲労などで意識が薄くなったり、近くにほかの登山者がいない場合は遭難の発生自体を知ることができません」と同課。届け出がないと家族もどこの山に行ったのか分からず救助が遅れる恐れもあります。