【Gクラス史上初のBEV】メルセデス・ベンツの開発担当者がエンジン車との違いを解説!
渡河浸水性能はエンジン車を大きく上回る
メカニズムで最大の特徴である電動パワートレインは、4輪独立モーターと116kWhの大容量リチウムイオンバッテリーで構成される。それにもかかわらず、渡河浸水性能は、エンジン車の700mmを大きく上回る850mmを実現した。メンテルさんは、「それは走行時に、モーターとバッテリーが完全に水に浸かっていることを意味する」と自信たっぷりに語る。 その実現には、バッテリーパックに完全なシールを施し、浸水しない構造であることが必須となる。そのため、内部を50度に温めたバッテリーパックを0度の水に浸けるショックテストを実施。さらに川底の走行を再現するために、その状態でバッテリーパックを装着したフレームをねじるという専用試験を40回繰り返すことで、信頼性を確認したそうだ。 そのバッテリーを守るアンダーボディプロテクションは厚さ26mmで、カーボンファイバーを含む複合素材で作られ、50を超えるボルトで堅牢なラダーフレームに固定される。 メンテルさんによれば、「アンダーボディプロテクションの下から5cm角の台座で持ち上げても、全く問題ない。合計10tくらいの負荷が掛かっても耐えられる強度を誇る」と説明。さらにバッテリーパックとの間には約15mmの隙間があるため、衝撃でアンダーボディプロテクションが変形しても、バッテリーに干渉しないように設計されている。その上、軽量化のため重量も57kgにおさえた。
BEVには出来ないことはない?
オフロード走行時には、Gクラスの価値を高めるべく、フル電動化を活用した新機能が与えられている。その場での360度ターンを可能とする『Gターン』、後輪中心の旋回とすることで小回り性を高める『Gステアリング』、デフロック機能を4輪制御で可能とした『仮想ディファレンシャルロック』、強力な駆動力を得るための4輪独立のトランスミッションなどで、Gクラスの名に恥じないBEVオフローダーとして磨き上げられている。 最後に、メンテルさんに少し意地悪な質問をぶつけてみた。それは「Gクラスのエンジン車と比較して、BEVには出来ないことはないのか」というもの。 するとメンテルさんは、「答えはノーです」とにやり。むしろBEV化は、Gクラスの可能性を高めたとする。 「エンジン車のG450とBEVのG580で同じようにオフロードコースを駆け抜け、山頂まで到達することが出来ます。しかし運転のしやすさでいえば、断然、BEVのG580のほうが上です。エンジン車のメカニカルな機能は、走行中、必要な時に操作することが求められますが、BEVならば、そのほとんどをクルマ自身でコントロールしてくれます。また多くのシーンでは、オンロード走行が占めるので、電動パワートレインによる静粛性や走りやすさは、多くのユーザーにメリットを生むでしょう」と締めくくった。 見た目がそっくりなBEVのGクラスは、『G580 with EQテクノロジー』の名が示すように、ガソリン車のポジションを受け継ぐものとなるようだ。メンテルさんの解説を聞き、日常的にGクラスを愛用する多くのユーザーにとっては、電動化による悪路走行のしやすさや乗員の快適性能向上など、確かにメリットの方が大きく思えた。骨太なオフローダーと先進のBEV性能の融合が、どのような乗り味を提供してくれるのか、今からの楽しみだ。
大音安弘(執筆) 上野和秀(撮影) 平井大介(撮影/編集)