赤ワイン「渋い」が始まり─21歳新米ソムリエ、知識“熟成”目指して奮闘中
「赤ワイン、実はあまり飲めなくて」 ── 。そう苦笑する中川朋佳さん(21)=三重県津市=は新米ソムリエだ。日本ソムリエ協会によるワインの提供やサービスに関する専門職「ソムリエ」認定試験で、11月実施された最終関門の3次実技試験を突破し、晴れてソムリエとなった。 本年度試験の21歳以下合格率は0.004%。味の好みや知識など経験が求められる職業で、若さゆえの苦労もあるという。念願のソムリエとなって現場で研鑽を積む日々だ。
赤ワインとの出会いは「濃くて渋い」 会話できないもどかしさからソムリエ目指す
中川さんは、三重県立相可高校の食物調理科・製菓コースを卒業後、県立美術館内にあるフランス料理店「ミュゼボンヴィヴァン」(津市大谷町)で、パティシエとして働き始めた。昼は菓子作りがメーンだが、夜は来客対応のサービススタッフを受け持った。客の中にはワインの知識が豊富な人も多く、接客をするうちに、ワインへの関心を持つようになったという。 ターニングポイントとなったのは成人となった2016年。店にあるワインの多くは、客から人気がある辛口でいわゆる甘くない赤ワインだ。それを口にしてみると「濃くて渋い」と驚いた。その後、あれこれ試して見つけたのは、果皮につく貴腐菌の作用で水分が蒸発し、糖分が凝縮されたブドウで作られた貴腐ワイン。極甘口の白ワインで「これは私もおいしい」とワインの味に納得した瞬間だった。 その年の秋には、県内で出張店舗のスタッフとして働く機会があり、料理と一緒にワインを提供することになった。その際、自分の知識不足でワインについて会話できないもどかしさを感じたという。「幅広いワインの知識があれば、もっとお客様と話ができて、いろいろな提案もできる」と、ワインの“案内人”であるソムリエになろうと決心した。
試験は1次の筆記に始まり、ワインの味を鑑定するテイスティング、試験官の要求に対応する接客・サービス実技の3次まで続く。 ソムリエは、ワインの産地やブドウ品種、醸造行程、ブドウ畑やその場所の地層など、ワインに関するあらゆる知識と、ウイスキーやビール、日本酒など酒類全般の知識が必要だ。暗記が求められる教本は、600ページに及び、中川さんは仕事を終えて帰宅後、明け方まで勉強。休日には、片道1時間以上かけて名古屋市へ行き、ソムリエを目指す人たちが学ぶスクールに通って技術を磨いた。