【これは実話です リーマンを破綻させた男の手記】追い詰められた男のマネー・ロンダリングのヤバすぎる手口…裏ガネの作り方を教えよう《5億円分の札束を輪ゴムで止めて》
---------- 2008年9月、アメリカでサブプライムローン(低所得者向けの住宅ローン)が崩壊し、大手投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻した。世界金融危機「リーマン・ショック」の直前、リーマン・ブラザーズから総額371億円にのぼる莫大なカネを騙し取った凄腕詐欺師(懲役15年)がいる。このほど「リーマン・ショックの引き金を引いた男」の回顧録『リーマンの牢獄』が出版される。2024年最注目の巨弾ノンフィクションに、知られざる現代史の裏側が赤裸々に記録される。(文中敬称略) ---------- 【本人写真】批判は覚悟している…リーマンから371億円を騙し取り、懲役15年
ゴールドマン・サックスから3億ドルを巻き上げる計画
チーム齋藤栄功(しげのり)がリーマン・ブラザーズから募った巨額の出資金には、償還期限がある。出資金第一弾の98億円には年利が24.48%もついており、償還期限の4ヵ月後までにノシをつけて106億3000万円を返済しなければならない。 第2弾、第3弾の借り入れ金の償還期限も次第に迫ってくる。チーム齋藤栄功は次第に追い詰められていった。 リーマン・ブラザーズを騙してカネを引き出し始める前に、齋藤たちにはゴールドマン・サックスから30億円のキャッシュを引き出した実績がある。このときは出資金を無事返済しているため、ゴールドマンにとっては短期間に多額の年利をせしめた成功体験だ。 〈ゴールドマン【・サックス】にババを引かせる第3ラウンドが始まっていました。あわよくばリーマンを上回る500億円ほど出資してもらえないかと思いました。 (略) とにかく時間がない。でも意外や、ゴールドマンには手応えがあった。やはり初回に味をしめて、2匹目のドジョウを狙っていたんです。米国のサブプライム危機はまだ対岸の火事と思っていた。山中氏【※齋藤との共謀者である丸紅の山中譲・元課長】は一縷(いちる)の望みをつないだはずです。 最終的にゴールドマンは3億ドルの出資実行を決め、契約調印の際に丸紅CIO(最高情報責任者)の同席を求めてきました。リーマンのように一部長の交渉同席では納得してくれない、ということです」 (略) ――そりゃ、山中氏も真っ青になったでしょう。当時の丸紅は誰でしたか。 「山中氏が代表印を偽造した松田章代表取締役副社長か、08年4月にCIOに就いた代表取締役専務執行役員の舩井勝氏あたりでしょう。だが、CIOはアニュアルレポートやホームページに顔写真が載っている。〈白バイさん〉【※元白バイ隊員の替え玉/詳しくは前回連載を参照】みたいな替え玉を仕立てたら、たちまち見破られてしまう。 (略) リーマンが全損のババを引き、ゴールドマンがタッチの差で逃げ切りが決まった瞬間でした。〉(『リーマンの牢獄』264~265ページ) ホンモノの丸紅CIO(最高情報責任者)に顔がソックリな影武者を準備するのは困難であったため、ゴールドマン・サックスから3億ドルを巻き上げる計画は未遂に終わる。