「死」を語り「生」を考える「デスカフェ」 愛媛に誕生
普段話題にしづらい「死」について気軽に語り合う「デスカフェ」が、松山市の喫茶店で開かれている。そんな話を聞き、思い切って参加してみた。すると想像以上にカジュアルな雰囲気で「死」と向き合い「生」について考えることのできる場だった。 企画したのは、会社員宮内仁子さん(50)と、友人で松山市鉄砲町の喫茶店「そらいろのたね」の店主・野中玲子さん(50)。コロナ禍を経験して「死を身近に感じるようになった」という宮内さん。他県で開かれているデスカフェに興味を持ち、県内でも同様の取り組みができないかと野中さんに持ちかけ、今年1月から月1回の頻度で始めた。 ルールは4つのみ。 ①自分の思いを自由に表現できる場であること ②議論やジャッジをする場ではないこと ③死別などを経験した人に寄り添うグリーフケアやカウンセリングの場ではないこと ④この場で話した個人的なエピソードを口外しないこと 何を語り合う? デスカフェの実態 「私は天国ってあると思うんです」。4月下旬、愛媛大や松山大にほど近い学生街にある会場に集まった6人のうち、最年少の大学生・田村有衣莉さん(20)は口を開いた。新型コロナウイルスの流行まっただ中に曽祖母を亡くし、葬式に参列できなかったと回顧。「それでもきっと、見守ってくれていると信じている」と力を込めた。初参加の50代女性も「見守ってくれていると思うと、残された側の気持ちも楽になるよねえ」と同調した。 その流れで、話題は参加者自身の葬式の話になった。 初参加の主婦・近藤節夏さん(52)は「意外と考えてなかったけど、大金はかけてほしくないな。散骨してくれたらいい」と明るく語る。 筆者も、昨年参列した祖母の葬式を振り返り「普段なじみのないお経で故人を悼むことに、少し違和感を抱いた。自分のお葬式はもっと別の形がいいな…」と打ち明けた。野中さんは、うなずきながら続ける。「無宗教の人のためのお葬式の形があってもいいよねえ。結婚式でいう『人前式』みたいな」 何となく心で感じていたことを他者の前で口に出すと、自分の考えが整理されるような気がした。雑談を交えつつ、予定の1時間半はあっという間に過ぎた。 定員は6人ほどと少人数のため、一人一人の話にじっくり耳を傾けられる。参加者の満足度も高かったようで「親族がどのような葬式の形を望んでいるのか聞いてみたい」「重いテーマだと思っていたが、身近な話題を共感できる空間で話せて楽しかった」とそれぞれ感想を述べていた。 企画した宮内さんと野中さんは「死を考えることは、今どう生きるかを考えることにつながる。一人で考えると落ち込みそうなことでも、みんなと話すことで前向きに考えられる」と語った。
愛媛新聞社