倒産寸前の会社を再建できる社長と、つぶしてしまう社長の根本的な違い。(横須賀輝尚 経営コンサルタント)
■素直な人、前向きなアイディアを出せる人、汗をかける人
これまで「税理士にうちの業界のことがわかるか」などと言って、税理士のアドバイスを聞かなかった社長も、あるいは「経営経験のないコンサルタントに何がわかる」と言って、コンサルタントを蔑視していた社長も、追い詰められると次第に素直に助言を聞くようになります。 これは弱っている証拠でもありますけど。 ただ、この素直も「責任転嫁的な素直」なのか、「本当に再建するための素直」なのかとでは、少し意味合いが違います。前者は素直でもなげやり。後者は本気で会社を立て直すために真面目にアドバイスを聞く、といったところでしょうか。 繰り返しになりますが、試算表、資金繰り表、経営改善計画書などの作成は、本当に地道。この先に本当に未来があるのかと疑ってしまいたくなる気持ちもわかります。しかし、これらはプロのアドバイス。プロを信じて、素直に実践する。この姿勢が重要です。 加えて、こんな窮地でも前向きにものごとを考えられる人。打開策としてのアイディアが出せる人、出そうとする人。本当にお金がなく、倒産間近になれば、通常ならまともな精神を維持するだけでも困難になります。その中でも、前向きに打開策を出す。いや、出そうとする精神性が、奇跡を呼び寄せるのかもしれません。 さらに、汗をかける社長。創業の頃は、どんな社長も必死に汗をかいて営業するもの。顧客ひとりひとりに靴をすり減らして会いに行き、また取引先に頭を下げ、自分の会社が軌道に乗るために、頭より身体を使ってきた、なんて社長も多いはず。 しかしながら、会社が成功すれば、徐々にそういったドブ板営業をしなくなります。 自ら動かなくても、広告を出せばいいじゃないか。あるいは自分じゃなくても、社員に行かせればいい。社長はどんどん現場から遠ざかり、最後は「俺は社長なんだから」と言って、次第に動かなくなります。 もちろん、仕組みとして社長が現場から離れることの重要性を否定するわけではありませんが、会社が倒産の危機に瀕しているわけですから、自らの手と足を動かさなければ奇跡は起きません。金融機関への金策や知り合いへの無心はもとより、お金を使わない営業だっていくらでもあるわけです。 顧客に会いに行くようなアナログな方法もあれば、いまはYouTubeやSNSなど無料で使えるツールはいくらでもあります。もちろん、各種ツールの活用には設計や戦略が必要ですが、無策でも何もしないよりは 何かが起こるかもしれない。そうやって汗をかける人こそ、幸運を引き寄せられるのではないでしょうか。