CS第２戦、ベンチで敗戦を見届ける岡田監督

◇コラム「田所龍一の岡田監督『アレやコレ』」 　もう岡田阪神の時代は終わったんだ！　と言わんばかりに阪神球団が動き出した。クライマックス・シリーズ（CS）ファーストステージのDeNA戦が終わった翌日（10月14日）に藤川球児氏（44）の「新監督」就任を発表。15日に就任会見―と一気呵成だ。 ◆藤川球児新監督、鮮やかイエローネクタイで就任会見【写真複数】 　場所は大阪市内の「リッツカールトン大阪」。2階の会場には約2時間前から多くの報道陣が待機していた。そんな中でひっそりと話題となっていたのが、13日のDeNA戦後になぜ、岡田監督のファンへのあいさつがなかったかの問題。その日の粟井球団社長の説明では「監督の体の状態がおもわしくなく、ベンチからマウンドへの移動も危うい状態。ですから大事をとって中止にいたしました」という。だが、実際は少し違っていたようだ。ある関係者によると…。 　「岡田監督がファンへのあいさつをしたくない―と言い出したみたいです。球団も説得したんですが…。それで仕方なく体の状態が思わしくないという理由をつけたようです」 　契約満了とはいえ、2年であっさりとクビを切られた岡田監督の最後の抵抗？　そういえば、試合後の囲み取材に出てきた岡田監督は負けてガックリはしていたが、マウンドまで歩けないほど弱ってはいなかった。そして一番近い記者が「お疲れ様でした」と声をかけると「そう言うてくれたのはお前だけや。ほんま、お疲れ様の言葉もないもんなぁ」と苦笑いで最後の会見が始まったのだ。 　それなら、岡田監督抜きでもコーチ以下選手全員がマウンドに並び、1年間応援してくれたファンへの御礼の気持ちをなぜ表わさなかったのだろう―と思う。 　午後2時、藤川新監督の就任記者会見が始まった。 　「当然、勝ちにいきます。岡田監督が残した思いをつないで、任された期間を全うする。面白いなと言われるチームを作りにいきます」 　野球解説のようにしっかりと自分の考えを話す藤川氏は、会見の中で終始、岡田監督を“恩師”と称えた。監督としての背番号を現役時代の「22」と決めたのも「岡田監督からもらっていなかった番号でなければ、全くこだわりはなかった」ときっぱりと言い切った。 　1999年、藤川新監督がドラフト1位で入団した時の背番号は「30」。2002年、星野仙一監督が就任すると「球児」にひっかけた「92」に変更しプロ初勝利を挙げた。だが、その後は鳴かず飛ばず。04年、岡田監督が2軍監督から1軍監督に昇格すると、藤川の“運命”も変わり始めた。2軍投手コーチだった山口高志氏のアドバイスで、上から力強く腕を振り降ろすフォームに改造。そして1軍投手コーチだった高校（高知商）の先輩・中西清起氏の助言でリリーフに転向。その年の後半に1軍に上がると―。 　「いつまでそんな2軍選手の番号背負ってんねん」。岡田監督の勧めで05年から「22」に変更、初セーブをマーク。“火の玉球児”が誕生したのである。 　理想のリーダー像は？と聞かれた藤川新監督は間髪を入れず「岡田監督です」と答えた。「岡田監督がよく言われていた『普通にやる』これに尽きるかと思います。アドバイス？　当然、していただきますよ」 　藤川新監督は岡田監督からの引き継ぎは「すべて必然」「運命です」と語った。球団と岡田監督との間はまだギクシャクしたものがあるだろう。だが、藤川新監督の言葉で岡田氏の怒りの心も少しは緩むのでは―と思う。《ええ参謀さえつけば、ええ監督になるかも…》と思わせるような爽やかな監督就任会見だった。 　ユニークなところがあったとすれば、球団が報道陣に「会見にはフォーマルな格好で来てください」とドレスコードを設定したこと。藤川新監督が会見場に入ってくるとき「それでは、拍手でお迎えください」と言ったことぐらい。いやはや実に阪神らしい？ 　▼田所龍一（たどころ・りゅういち） 1956（昭和31）年3月6日生まれ、大阪府池田市出身の68歳。大阪芸術大学芸術学部文芸学科卒。79年にサンケイスポーツ入社。同年12月から虎番記者に。85年の「日本一」など10年にわたって担当。その後、産経新聞社運動部長、京都、中部総局長など歴任。産経新聞夕刊で『虎番疾風録』『勇者の物語』『小林繁伝』を執筆。