ワコースチール、設備増強・最適レイアウト。生産性向上・品質強化、脱炭素へ
日本製鉄系厚板加工・製罐大手のワコースチール(本社・千葉県成田市所、社長・里嘉郎氏)は、工場内の作業安全強化と生産効率化・構内物流改善を目的とした設備レイアウトの変更が完了した。 モノの流れ、一方向に 同社は、建機向けやセグメント向けを主体に厚板の一次加工(切板溶断)から開先、曲げ、穴あけなど各種二次加工を経て機械加工、溶接・製罐まで同じ敷地内で一貫する。溶断した切板製品に生じる反りや歪みといった平坦度不良の矯正のほか、設備や機械部品の保全・メンテナンスも社内で手掛けている。 これら各工程を、全10棟ある工場建屋ごと、あるいは建屋内の決まったスペースに設備集約することで上工程から下工程へのモノの流れを一方向に整流化させるレイアウトに改善した。 具体的には、これまで8号棟の南側に計6台あった折り曲げプレスを、昨年夏に長尺品向けのみ1号棟に移し、残りの5台を2号棟に移設した。移設後の跡地には、昨年末から年初にかけて12KW門型ファイバーレーザ切断機を新設した。 これにより8号棟はレーザとプラズマが稼働する溶断(厚板一次加工)専用棟となった。最新鋭12KWファイバーレーザへの更新に伴い、棟の北側にある老朽化したCO2の6KWレーザを撤去し、その跡地を母材置場とすることでトレーラーの搬入通路を広げる予定。 トレーラー搬入口の最も近くに母材を積み、そこから棟内を行き来せず一方向に最短距離で加工・出荷する動線を整えることでリードタイム短縮はもちろん、物流24年問題も意識した脱炭素化や省エネ促進にも貢献する。 平坦度矯正機、順次導入 1号棟は開先加工が主体でガス式、プラズマ式を合わせて計3台のロボット開先機と5台の機械開先加工機が稼働する。このうち長尺品向けの開先設備と昨夏に8号棟から移設した長尺品向けプレスを向かい合わせに配置し、オペレータ同士が互いに進ちょくを確認しあいながら効率的に作業を進められるよう工夫も施した。 2号棟のほぼ中央には加圧能力300トンの矯正用ベンディングロール(最大幅3・5メートル)を昨年8月に設置した。切板加工品に対する顧客の品質・精度要求は厳格化する傾向にあり、同社では3種の平坦度矯正機で対応する。 母材切断時の熱影響で生じた反りや歪みを、次工程の加工に入る前に必要に応じて平坦度矯正するため、ベンディングロールのほか今年3月には幅1・5メートル対応の小型レベラーを、4月には幅1・8メートル対応の600トン矯正プレスを新設する計画だ。これら設備を、切板のサイズや板厚に応じて使い分ける。設置場所については設備特性や加工対象部材を考慮して最適エリアを選定した。 12KWファイバーレーザや矯正機3種を導入した上で建機品、セグメント品、その他向け先別の製品出荷ヤードと保全ヤードを限られた建屋スペース内で確保するのが物理的に難しくなる。そこで22年8月には製罐の仕掛かり品専用のテント倉庫を設置し、翌23年4月には新たに10号棟も竣工した。 建屋増設し手狭を解消 10号棟(約870平方メートル)には平坦度矯正用600トンプレスを設置するほか、建機品以外の製品置場・出荷ヤードとして活用する。 こうして新たなスペースを捻出したことで「手狭」というボトルネックを解消。建屋増築、設備再配置完了後の今年4月のレイアウトは、1・2号棟が「開先、プレス曲げ、穴あけの各種二次加工」とロール矯正機。3・4号棟と隣接する8号棟が「ガス、プラズマ、レーザによる切板溶断」(4号棟の一角に矯正用小型レベラー設置)。5・6・7号棟が「建機向け溶接・製罐および製品出荷ヤード」。9号棟が「高速マルチセンターによる機械加工と保全スペース」。10号棟が「プレス矯正機と製品ヤード」にリニューアルする。 約7万4千平方メートルの敷地内では10棟の建屋(総面積約2万5千平方メートル)をフル活用して複数の工程を一気通貫する。多岐にわたる母材や部材、仕掛かり品の棟間移動は、20台近くあるフォークリフトがムダなく効率的に構内を移動ことで「構内のモノの流れ」の最適化を常に心掛ける。