「NON STYLE」石田明 なぜ『M-1グランプリ』<準決勝>でウケても<決勝>では通じないのか?「コアなお笑いファンを納得させても、それだけでは…」
漫才日本一を決める『M-1グランプリ』。24年度では「9人審査員制」が採用され、柴田英嗣さん(アンタッチャブル)、哲夫さん(笑い飯)、礼二さん(中川家)、若林正恭さん(オードリー)らが務めることが発表。歴代王者を中心に新しい顔ぶれがそろうなか、注目を集めているのが『M-1 2008』の覇者で、漫才に対する分析が鋭すぎて「石田教授」とも呼ばれる「NON STYLE」の石田明さんです。今回その石田さんの新刊『答え合わせ』から『M-1グランプリ』にまつわるお話を紹介いたします。 なぜヒリヒリと<漫才とは何か>を追求していた『M-1グランプリ』で奇抜な漫才が台頭してきたのか?「そのきっかけは2010年からの…」 * * * * * * * ◆なぜ「準決勝」でウケても「決勝」でウケないのか? 同じ「舞台に立って漫才をする」でも、寄席の舞台とM-1のような賞レースとではかなり違います。寄席では、早い話「より多くの人にウケること」が正義ですが、賞レースでは必ずしもそうではありません。 特に、現在最大の賞レースであるM-1ともなると、万人に通じる「ウケ」よりもっとコアなものを求めるお笑いファンが一定数、見ています。いうなれば「普通のタイ料理よりパクチー増し増しなほうが好き」な人たちですね。 M-1は準決勝を勝ち上がるのが一番難しいんですが、それは、準決勝の会場にコアなお笑いファンが多い環境だからやと思います。 M-1は、万人受けを求められる寄席で爆笑をとってきたような人たちが、むしろ苦戦する世界。特に僕らが挑戦していたころは、その傾向が強かったと思います。
◆コアなお笑いファンにウケても… だからといって、準決勝でバコーンとウケたコンビが決勝でもウケるかといったら、そうでもありません。なぜなら、回戦が進むごとに増えてきた「パクチー勢」が決勝では一気に減って、客層がふたたび寄席のそれに近くなるからです。 尖ったことばかりやっていると、準決勝までは勝ち上がれても、決勝で大きくスベる可能性がある。コアなお笑いファンを納得させつつ、ベタな笑いもとれないといけないんです。 僕らは寄席でウケていた口なので、準決勝を勝ち上がるのが大きなハードルでした。僕らと似た感じで、絶対に決勝に行けると目されながらも一度も行けずに終わってしまった実力派もいます。2024年2月に解散したプラス・マイナスなんかは、寄席ではかなりウケていましたが、M-1では準決勝の壁に5回も跳ね返されました。 一方、POISON GIRL BANDなどは準決勝でめちゃめちゃウケていましたけど、3回決勝に進出して3回とも結果はふるいませんでした。これは、お笑いの能力値が高すぎるからなんですよね。コアなお笑いファンにはウケるので、準決勝は突破できるけど、決勝を見ているお客さんは置き去りになりがちなんです。
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