重大だが実現は難しい「仕事と家庭の両立」…破綻を避けるために心に留めておくべきこと
日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。人生には、さまざまな困難が待ち受けています。 【写真】じつはこんなに高い…「うつ」になる「65歳以上の高齢者」の「衝撃の割合」 『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)では、各ライフステージに潜む悩みを年代ごとに解説しています。ふつうは時系列に沿って、生まれたときからスタートしますが、本書では逆に高齢者の側からたどっています。 本記事では、せっかくの人生を気分よく過ごすためにはどうすればよいのか、『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)の内容を抜粋、編集して紹介します。
仕事と家庭の両立
仕事と家庭の両立は、人生において重大な課題です。が、実現は簡単ではありません。家庭を大事にしすぎると、勤務が疎かになって評価が下がり、仕事を優先しすぎると、家庭が犠牲になって、夫婦不和や子どもの反抗、非行などを招きかねないからです。 定時になればさっと帰宅でき、休日はきっちり休むことができて、好きなときに好きなだけ有給休暇を取得でき、産休や子育て休暇、介護休暇も遠慮なく取れるような職場なら、家庭との両立も可能でしょう。 また、毎日残業が続いたり、急な仕事で帰りが遅くなっても、配偶者や子どもが笑顔で迎えてくれ、予定外の仕事で休日の約束がキャンセルになっても怒ったりむくれたりせず、仕事の愚痴もいやがらずに聞いてくれ、子育てや老親の介護を担わなくても怒らず、給与の額にも文句を言わない相手に恵まれたなら、仕事との両立もしやすいかもしれません。 実際にはそんな状況はまずあり得ず、むしろ反対がふつうでしょう。 現実が厳しければ厳しいほど、悩みは深くなり、心身ともに疲弊し、忍耐力、理解力、寛容力が弱り、キレやすくなり、あるいは抑うつ的になったりして、両立どころか、仕事も家庭も両方破綻させかねません。まじめすぎる人や、完全主義者、悩みを引きずりやすい人は要注意です。 破綻を避けるためには、バランス感覚が大事で、上手に優先順位をつけ、少しくらい不完全でもよしとする鷹揚さが必要です。 世の中はどうせ思い通りにならないのだから、あまり欲張らず、そこそこで満足する気持ち、すなわち、「少欲知足」が有用ということになります。 さらに連載記事<じつは「65歳以上高齢者」の「6~7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」>では、高齢者がうつになりやすい理由と、その症状について詳しく解説しています。
久坂部 羊(医師・作家)