生活保護を受けると「病院を選べない」と聞きました。本当なのでしょうか?
生活保護は、経済的に困窮している人に必要な保護費を給付する制度ですが、受給者となった際には、生活するうえで制限されることも出てきます。 例えば「生活保護を受けると、かかる病院を自分で選べない」という話を聞いたことがあるかと思いますが、実際のところはどのようになっているのでしょうか。 本記事では、生活保護の医療扶助を受けるにあたって指定された医療機関を使用する必要性や、遠方にある医療機関の使用が認められるケースについてご紹介します。 ▼「生活保護」の受給要件とは? 親族への扶養照会は必須なの?
生活保護制度では指定の医療機関にかかることが原則
生活保護における扶助の一つである医療扶助は、経済的に困窮しており、最低限の生活を営むことが難しい人に対して、医療費の給付を行うものです。診察代や薬代、治療材料費、医学的処置や手術にかかる費用などが、原則として現物支給(医療券)されます。 医療扶助によるこうした医療費の給付は、生活保護法が指定した医療機関で実施されるため、自分で医療機関を選ぶことはできなくなる可能性があります。
厚生労働省が定める指定医療機関とは?
指定医療機関になっているのは、生活保護法第四十九条の二第2項各号の欠格事由に該当していない医療機関です。 欠落事由の一例は、下記の通りです。 ・健康保険法に規定する医療機関または薬局ではない ・指定医療機関の指定を取り消され、その取り消しの日から5年以内である ・医療機関の開設申請者が禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなるまでの者である 上記のような条件に該当しない医療機関の中から、国の医療機関は厚生労働大臣によって、そのほかの医療機関は、都道府県知事・政令指定都市市長および中核市市長によって指定されます。 原則として、居住地に近い場所にある指定医療機関にかかることになっており、その中からどの医療機関で受診するかは、本人の希望を参考に福祉事務所が決定します。
遠くの医療機関が認められるケースとは?
遠方にある指定医療機関にかかることを希望する場合は、理由によってはそのことが認められる可能性もあります。 例えば「長年診てもらっているかかりつけ医がいる」という場合は「医師との信頼関係が築けていることで治療によい影響を及ぼす」と判断されて、遠方でもその医療機関にかかることができるかもしれません。 また「その医療機関でなければ治療を行うことが難しい」などの事情がある場合も、同様です。遠方の指定医療機関にかかりたいときは、ケースワーカーに事前に相談しましょう。