【ふくしま創生臨時支局・矢祭町】高校生パワーでコンニャク再興 生徒が栽培、6次化開発も 連携し伝統継承へ
福島県矢祭町の農家の有志が取り組む「幻」とも呼ばれる在来種のコンニャク再興に高校生の若い力が加わる。かつて県内有数の収穫量を誇ったが、海外産や改良品種の普及により現在は少数の農家が生産するのみとなった。農家は「若い世代の発想を取り入れ、特産品として後世に残していきたい」と意気込む。 町では昭和30年代後半~40年代前半ごろにコンニャクが盛んに生産され、高値で取引された。町内では「コンニャク御殿」と称される新築住宅が多く建てられた。しかし、安価な外国産の普及や、在来種に比べて栽培期間が1年短く病気に強い改良品種の台頭を背景に、在来種は価格が暴落。生産農家も大きく減少した。現在は町内で在来種を育てているのは10人程度という。 町内の農家の片野恵仁さん(70)や片野盛好さん(82)ら有志は町と協力して「一畝一大(いっせいちだい)プロジェクト」を始動させ、栽培を継続している。活動は今年で10年を迎え、生産量は徐々に増加。現在は各農家で年間計約1トンの在来種を育てている。
ただ、農家の高齢化が進み、長期的な生産体制の確保が課題となっていた。こうした中、恵仁さんと旧知の仲で地元東白川郡の修明高(棚倉町)の同窓会長を務める滝田国男さん(67)から高校生との協力の提案を受け、連携が実現した。 恵仁さんらは昨年秋、修明高に在来種の種芋を譲り渡した。地域資源科の1、2年生約40人が栽培方法の指導を受け、5~6月に校内外の畑2カ所(計約20・5アール)に合わせて約1300個を植えた。気温や降水量などに気を配りながら成長を見守っている。 在来種は植え付けから収穫まで3年かかる。改良品種に比べて栽培期間が長く、病気にかかりやすいため安定生産が難しいことが課題に挙げられる。一方、栽培期間が長い分、粘り気が強く香り高いのが特長だ。 恵仁さんらが2年ほど育てた種芋を含むため、初収穫は今秋ごろを見込む。6次化産品の開発を見据えて、生徒はアイデアを練っている。地域資源科2年の蛭田悠青永(ゆうせい)さん(17)は「地元食材と組み合わせた加工品の開発にも取り組みたい。(在来種を)多くの人に知ってもらい、身近なものにしたい」と青写真を描く。渡部緑教諭(39)は「地域の方と連携しながら栽培方法の確立を目指したい」と話す。
恵仁さんは「若い人の力は心強く、世代を超えて受け継げるのはうれしい。地域の伝統と文化を絶やさないよう協力していきたい」と話す。盛好さんは「取り組みを長く続け、在来種コンニャクの魅力を広めていきたい」と思いを語る。