精神科医を演じた中村倫也「分厚い本を10冊くらい読みました」
――今回演じた弱井の印象と、どういうふうに演じていたかを教えてください。 「不思議な人だなと思っていました。今回のドラマでは、パーソナルな部分はあまり描かれていないんです。だからこそ、気になる部分も出てくるように作られているのかなと。演じる上では、患者にとって揺らがない医師、“定点”のような存在を目指していました。撮影に入る前に、監修の先生に『人間なので、患者さんに寄り添い過ぎてしまうことや、自分のコンディションでちょっと突き放してしまうことはあるんですか?』と聞いたんですが、『ないです。医師として、いつも同じ距離でいる』とおっしゃっていて、なるほどと思って。弱井が、友人の医師から『患者の問題に踏み込み過ぎなんだよ』と言われるシーンがあるのですが、弱井ほど患者に寄り添う精神科の先生は、実際にはあまりいないみたいなんです。リアリズムと、『こんな先生がいたらいいな』という理想と、精神医療で正解だとされているもののバランスを常に探していました」
――中村さんご自身は、悩み事があったりとか、壁にぶつかったりとかした時はどのように解決していますか? 「一番苦手な質問ですね。ないんです。悩み事も壁も。この年になると、仕事における壁はうまいこと迂回できるようになるし、壁が見えるようになってきているので、見えた時点で、悩まず“やるだけ”です」 ――答えを出す時に、自分で考えるタイプですか、それとも人に相談するタイプですか。 「人生で他人に相談したことは、あまりないです。家族に話を聞いてもらうことはありますけど、基本的には自分でジャッジしています。自分の行動の選択を自分でしないと、逃げ道ができるので。言い訳できちゃうじゃないですか。逃げられると思うと、いくらでもだらけてしまうので」
――今作は、各回でいろんな俳優さんが患者役としてゲストで出演されていましたが、撮影の感想を教えてください。 「(第1話のゲストで、パニック症の雪村葵役を演じた)夏帆さんは共演するたびに、僕が彼女を助ける役が多くて不思議なんです。ものすごく信頼をしている俳優さんなので、ご一緒できてうれしかったです。第2話では、松浦慎一郎さんが双極症、第3話は白石聖さんが境界性パーソナリティー症の役で、演じる上ですごくカロリーを使うので、『無理しないでね』と思っていました。医者は患者と向き合いますけど、僕は医者を演じるので、患者を演じる彼ら彼女らと向き合って、探しながらやっていました。患者を演じてくれた3人も、患者の身内を演じてくれた方々も、すごく真摯(しんし)に演じてくださったので手応えがある作品になりました」 ――弱井のセリフで、「ベイビーステップ、少しずつできることから」というセリフがありますが、中村さんが最近少しずつ、コツコツ取り組んだことを教えてください。 「舞台の稽古ですかね。今、本番中ですが、舞台は1か月ぐらいかけて一つずつ積み上げていくので。やっているうちに、考えなくても勝手に動くようになって、アレンジを加えて…と、舞台は段階を経て、育っていくものなんです」