【借金に潜む魔法と罠】子どもから「なぜ借金しちゃいけないの?」と聞かれたときに正しく説明する方法
住宅ローンや教育ローン、クレジット払いなど、我々の生活に身近な「借金」。一方で、子どもから「借金」について聞かれたとき、そのしくみやメリット・デメリットを正しく説明できるだろうか。新刊『親子で学ぶ どうしたらお金持ちになれるの?』(筑摩書房)で、小学生(高学年)や中学生でもわかるような書き方で経済合理性について解き明かした作家・橘玲氏が解説する(同書より一部抜粋して再構成)。 【イラスト】借金の「レバレッジ(てこ)」効果を解説
* * * 紙に四角い貯金箱を描いて、そこに百円玉を1つ置きます。その右側に、貯金箱にあるお金の内訳(それがどのようなお金なのか)の説明を書きます。この100円は「自分のお金」で、これを「資本」と呼びます。一方、貯金箱のお金が「資産」です。
てこを使ってお金を増やす
なにかラッキーなこと(机の引き出しから百円玉を見つけた、とか)があって、貯金箱の100円が倍の200円になったとしましょう。すると、資本(自分のお金)も200円になります(掲載図28)。 では次に、パパやママから100円借りて、それも貯金箱に入れることにしましょう。貯金箱には百円玉が2つありますが、そのうち1つは資本(自分のお金)ではないので、別にしなければなりません。この借りたお金を「借金(負債)」としましょう。 ここでもなにかラッキーなことがあって、貯金箱のお金が2倍になりました。百円玉2つが、4つに増えたわけです。 ここで注目してほしいのが、貯金箱の内訳です。別掲図29では、驚いたことに資本が300円になっています。資産(貯金箱のお金)が2倍になっただけなのに、資本(自分のお金)は3倍に増えたのです。 なぜこんな不思議なことが起きるかというと、貯金箱のお金が増えても、借りたお金は変わらないからです。そのため、自分のお金=資本だけが増えているのです。借金(負債)のこの効果を「レバレッジ(てこ)」といいます。
よいこともヒドいことも倍になる
理科の実験で習ったように、てこを使うと重いものでも簡単にもち上げることができます。それと同じように、投資にレバレッジをかけると、資本を簡単に増やすことができます。 でもここには、大事な注意点があります。「レバレッジがうまくいくのは、貯金箱のお金が増えたときだけ」で、「貯金箱のお金が減ったときはヒドいことになる」のです。 別掲図29の状態で、400円に増えたお金をすべて使ってお菓子を買い、貯金箱のお金がなくなると、別掲図30のようになります。 貯金がゼロだと資本もゼロになりますが、借りたお金は減りません。その結果、お金がないのに借金だけが残ることになるのです。 2倍のレバレッジをかけると、うまくいったときは「よいこと」が倍になります。失敗すると、「ヒドいこと」が倍になります。借金でレバレッジをかけると、得することも、損することも、その結果が拡張されます。レバレッジは「倍返し」のようなものなのです。