岡崎慎司は「背伸びしない」 デメリットをメリットに変えた“光”を見出す力【コラム】
なぜマインツでトゥヘル監督のサッカーにハマったか
元日本代表FW岡崎慎司は今年2月26日に今季限りでの現役引退を発表し、5月18日に現役ラストマッチを終えた。さまざまな凄さを持った選手だったが、その1つに解釈力と実践力が備わっていたことが挙げられる。マインツ時代、トーマス・トゥヘル監督が指揮するチームのサッカーに上手くハマっていた。 【動画】スタンドからも大きな拍手! 岡崎慎司を両チーム選手&スタッフが花道で見送る瞬間 「守備が洗練されてるから、やりたいことが分かりやすい。逆サイドを見ても、俺と同じで中を絞りながらサイドに追いやれてる。前にプレッシングかけて(ボール)取れる時が一番いいんで。監督にも下がるばかりじゃなくて、前にプレッシングかけに行ってくれって言われています」 岡崎はやりやすいと話していたが、トーマス・トゥヘル監督にしても岡崎は伝わりやすいと感じていたはずだ。戦術的な話は受け止め方の解釈が違うと噛み合わなくなる。分かったつもりでも空間や状況の把握能力に差があれば、その時々で異なる準備をし出すことにもなる。 例えば、「センターバック(CB)がボールを持ったらワンサイドを切りながら、弧の動きをするようにプレスをかけ、サイドバック(SB)やウイングバック(WB)にパスが出るように仕向けよう」「1人がボールを持ったCBにプレスをかけたら、もう1人のFWかトップ下の選手はセンターにいる相手MFへのパスコースは切らないといけない」「相手にボールが渡りそうな時に即座に飛び込んでプレスをかけられる距離感を保ってほしい」みたいな戦術アプローチがある。 それこそグラスルーツの現場でも普通に指導される内容だが、本当に指導者がイメージする通りの動きができる選手は意外と少ない。「分かったか?」と聞くと、「分かった」と答える。でも何度も同じミスをしているから、繰り返し説明しようとしても「その話はもう聞いた。分かってるよ」という反応を示す選手もいる。 もちろん優れた指導者というのはそうした場合に、異なるアプローチで修正したり、自分の意図を明確に伝えて実践してもらえるようにできる能力を持っているが、とはいえ、そうした“回り道”をせずに選手に伝わるのであれば、それに越したことはない。