中国軍による台湾包囲演習はこけおどし、実戦なら台湾のミサイルの好餌
■ 4.台湾封鎖のイメージ作り 台湾を取り囲む演習海域は、2022年8月の米国下院議長訪台の時と類似し、台湾の監視区域に入っていて、台湾を囲むように設定されている。 そして、そのほとんどが台湾の港への入港や出港を監視・停止させることが可能であるかのように見える。 台湾を海上封鎖するぞというイメージを与えているようだ。 中国中央テレビは、今回の演習「連合利剣2024A」について、中国軍事専門家の見方ということで、 (1)「台湾封鎖の新モデル実施の訓練に重点を置いたもの」 (2)「台湾最大の港(高雄港)があり、物流や貿易にダメージを与える」ということを付け加えて放送した。 中国軍が「台湾の海上封鎖」という目的を直接発表すると、国際社会と台湾への刺激が大きく、反発を招きかねないので、専門家に間接的に言わせているのだ。 中国が台湾と日本に、有事にこのような形で台湾封鎖があると思わせている。 とはいえ、台湾の交通当局によると、「演習による交通への影響はなく、航空機などは通常通りに運航していた」ということだった。 台湾は、中国軍のこのような行動に慣れている。また、客観的・冷静に見てもいる。
■ 5.台湾の「海上封鎖」は現実的に可能か 中国は、演習海域を台湾周辺に図示して、公表することによって、台湾を包囲(海上封鎖)するかのように見せている。 今回の演習が、台湾有事において現実的に可能なのか、仮想的なのかは、戦えばどのようになるのかについて、シナリオ検討をしなければ分からない。 その検討をしないで、「包囲だ」「海上封鎖だ」というのは、中国の認知戦に致されてしまうことになる。 そこで、有事に今回図示した海域で「海上封鎖」が現実的なのかについて次に分析する。 (1)中国軍艦による台湾封鎖 台湾は、対艦ミサイルでは米国製の「ハープーン」(射程120~320キロ)、国産の「雄風2」(射程約160キロ)および「雄風3」(射程約400キロ)を保有している。 このミサイルの制圧範囲を図示すると、図3のとおりである。 図3 台湾軍の対艦ミサイルの制圧範囲 図4 台湾軍による対艦ミサイル攻撃のイメージ図 中国軍が示した演習海域に台湾軍のミサイル制圧範囲を重ね合わせると、演習海域はその中に入る。 ということは、海面上に浮かぶ中国海軍軍艦は、台湾軍のミサイルが命中して、撃破されるということである。 ウクライナでの戦争を見ると、ロシアの軍艦は飛翔し向かってくるウクライナの対艦ミサイルを撃墜できなかった。 そして、被弾して大破している。 2022年に就役したばかりの軍艦も撃破されてしまっている。中国の兵器は、ロシアと同じものか派生型なので、今、黒海で起きていることと同じことが起きるだろう。 つまり、台湾軍の対艦ミサイルの射程内に入れば、ことごとく大破されてしまうということになる。 とすれば、中国軍艦艇が中国が設定した海域に存続することは、不可能である。 有事、中国軍艦艇は、台湾軍の対艦ミサイルの射程外でなければ、行動することはできないのである。 結果、中国軍が今回示した海域において、台湾軍を包囲して海上封鎖することは不可能であり、非現実的な仮想の話となる。