ドローンで収量把握へ サトウキビ農家ら協力 喜界島で実証実験
サトウキビの生産性向上や農家の負担軽減を図ろうと、ドローンを使った農地測量、キビ生育調査の実証実験が鹿児島県の喜界島で始まった。空撮により作付面積や生育状況を把握することで、目視、手作業で行っていた調査を省力化。より正確な収量見込みを算出し、栽培から収穫、製糖など一連の効率化を目指す。実験の中心となる吉田LAB(ラボ)の吉田奈津子代表は「県内でも初めての取り組み。喜界島での実験成果が奄美群島全体のサトウキビ関係者のためとなるよう、協力して事業を進めていきたい」としている。 サトウキビは喜界町の農業生産額の約7割を占める基幹作物。作付面積や生育状況から算出する「収量見込み」は、製糖工場が操業計画を決める際の根拠となり、収穫、出荷など関係者の作業計画にも大きく影響する。一方で作付面積は生産者の自己申告制のため実際の面積との乖離(かいり)が大きく、手作業で行う茎長や糖度の計測も猛暑や働き手不足のため関係者にとって課題となっている。
実証実験は徳之島を拠点に奄美・沖縄で産業用ドローンの販売や操作教習、農薬散布代行を行う吉田ラボが発案。喜界島はドローンによる薬剤散布の実績があり、撮影補助や関係者間の協力体制が整っていること、農地規模が適していることなどから調査地に選定した。喜界町さとうきび生産対策協議会と、生産者で組織する喜界島農業用ドローン協議会が協力し「喜界島さとうきびコンソーシアム」を構成。県が公募していた「地域課題解決型ドローン実証実験」に応募し、9月に採択された。 同町の畑で7日にあった実演会には生産農家や関係機関、行政の担当者ら14人が参加。産業用ドローンが自動飛行で高度約30メートルから56アールのほ場を撮影し、約10分で測量と生育調査を終了した。今後は県が指定する調査ほ場90筆の測量と、30筆の生育調査を毎月実施。従来の手作業の生育調査に加え、生葉の葉緑素量を調べるSPAD調査も並行し、ドローンデータと比較検証。製糖工場の操業期間終了後の実績値とも比較し、来年6月の町生産対策協の総会で評価を行う。 実証実験は5年計画で、県の事業終了(2025年2月)後も調査を継続。先行して同実験を進める沖縄県南大東島のチームとも情報交換し、調査データを蓄積することで精度を高め、29年を目標にドローンによる調査手法の確立を目指す。