井上尚弥の9・9米国防衛戦は軽量級の世界トップ5祭典という異例尽くし!
その異例の米国デビュー戦で期待されているのは、もちろん超攻撃的ボクシングによるインパクトのあるKO決着である。井上も、そこで何が求められているかを十分に理解している。 「アメリカでの試合は、夢だったが、スーパーフライ級での王座をとったくらいから望んでいた。今はワクワク感。モチベーションは最高。アメリカでのデビューはスターになるための第一歩になる。やはり攻撃的ボクシングが望まれると思う。どれだけファンを喜ばせる試合ができるか。まずは勝つことが重要になるが、KOなり、盛り上げる場面を見せていきたい。必ずいい試合をして次につなげたい」 ニエベスは、20戦17勝1敗2分の戦績で17勝のうちKOは9試合でKO率は、それほど高くないが、ダウン経験のないタフなボクサーファイターでリーチがありスピーディー。ディフェンスを含めバランスがとれていて、左のリードブローは怖くないが、多彩なコンビネーションと、特に右のストレートは要注意だ。 井上は、「まだ映像を見ていない」と言うが、父で専属トレーナーの真吾氏によると、「スピードのある正統派。噛み合うと思う」と言う。そして「アメリカのファンは好き嫌いの白黒がハッキリしている。尚のスタイルは受けると思う」と続けた。 時差に環境の変わる場所での減量。初の海外で戦う上での不安はあるが、井上は対策を練るという。 「直前に現地入りするようなのでウエイトは行く前に作っておかないといけないと思う。調整はしっかりとやりたいが、昨年ロスでロマゴン戦を視察した際に時差は経験できているので、その経験は大きい」 ただし、英語対策だけは、練られていないようで「英語?まったくダメです。今からやっても間に合わないでしょう」と、笑い飛ばした。 この試合の先には、ロマゴンとのビッグマッチを見据える。井上も、ロマゴンも「ぜひ拳を合わせたい」と口を揃え、ロマゴンのマネージャーも、「グレートなチャンピオンと試合ができる日を臨む」と言う。しかし、ロマゴンがシーサケットからベルトを奪還しても、次はクアドラス対エストラーダの勝者と指名試合を行わねばならず、ロマゴンとの統一戦が実現するのは、早くとも「次の次」ということになる。 そして、その機会が、先になればなるほど障害が生まれる。井上は、減量が厳しくスーパーフライに留まることが限界に近づいているのだ。 「次の次に必ずロマゴンとやれると言うのならば頑張れますが、それがなければバンタムを視野に入れていきたい」と井上。大橋会長も、「減量を考えるとバンタム転向、3階級制覇を狙うという方向になるかも」と言う。井上がインパクトを残せばバンタムに上げても米国の市場のニーズは増すだろう。 「年に3度試合をするとして、そのうち1試合、年一で今後もアメリカで試合をしていきたい」 井上が抱く未来構想。ビッグスターへの登竜門は9・9ロスに用意された。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)