天国の父に活躍する姿を レギュラー会場の権藤可恋に届いた“吉報”「来年のために1つでも上を目指したい」
<大王製紙エリエールレディス 2日目◇15日◇エリエールゴルフクラブ松山(愛媛県)◇6575ヤード・パー71> ステップ会場ではランク2位の木下彩がダブルピース【写真】 今季の年間女王は前週の「伊藤園レディス」で竹田麗央に決まったが、新女王は予選落ちして自宅のある熊本に戻っていた。主役が会場にいない史上初の珍事。この日、下部のステップ・アップ・ツアー新女王に輝いた権藤可恋も、その瞬間は会場のある京都ではなく、主催者推薦で得た今季3試合目となるレギュラーツアーを愛媛で戦っていた。 「ホールアウトしたときにギャラリーの方に『おめでとう!』と声を掛けていただいて知りました。やっぱり気になっていたので、うれしかった。(木下)彩ちゃんに逆転されたら仕方ないと思っていたけど、1位になってからは変なプレッシャーとも戦っていたので、1位のまま終わりたいと思っていました」 ステップの今季最終戦「京都レディース」は、この日が最終日。獲得賞金で争う「明治安田ステップ・ランキング」で権藤は1位に立っていたが、同ランク2位の木下彩が優勝して賞金360万円を獲得すれば、順位は入れ替わっていた。結果は木下は2位タイに終わり、プロ10年目の権藤が約114万円差で初のステップ女王となった。 ステップの賞金ランク上位2人には、翌年の第1回リランキングまでのレギュラーツアーの出場資格が与えられる。仮に木下が優勝しても権藤の2位は確定していた状況だったが、今回の推薦を受けたのは9月下旬。当然、まだ2位以内に入れるかは分からない状態で、「本当にエリエールに行くの?」と心配する仲間もいたという。「どうしようかなと迷ったけど、エリエールまでの試合で頑張れば大丈夫かなと。せっかくいただいたチャンスだし、来年に向けても、今の自分がどれだけレギュラーでできるかを試したかった。こっちに来てよかったです」。 初日は「67」で回り、7位発進。インから出た2日目は12番でボギーが先行したが、2番で5メートル、パー3の3番でティショットをピンそば1メートルにつけて2連続バーディを奪った。4番ではボギーを叩いたが、8番のバーディで「70」。スコアを1つ伸ばし、トータル5アンダーの22位タイで決勝ラウンドに進んだ。 「先にボギーが来て、耐える展開だったけど、最終的にはアンダーパーで終われてよかった。予選カットのプレッシャーと上位に行きたい欲とのはざまで、自分のプレーはできたと思います」 10歳でゴルフを始めたときからの師匠でもあった父・一夫さんが7月に急逝した。昨年からの闘病生活だったが、別れは突然だった。悲しみを乗り越えて手にしたタイトル。来年はステップ女王の肩書を引っさげて、レギュラーの舞台に帰ってくる。 プロ4年目だった2018年には「KKT杯バンテリンレディス」で3位になるなど賞金ランキング39位で初シードも獲得した。ステップでの経験を生かして臨む新たな挑戦。「来年のためにも少しでも上に行きたい」。決勝ラウンドの2日間で積み重ねる自信が、30歳となる25年シーズンにつながっていく。(文・臼杵孝志)