「中小企業が連帯すれば、世界を狙える」 宇宙ステーションに自社部品を飛ばした、リアル下町ロケット企業社長の思い
宇宙ステーション補給機「こうのとり」の部品を手がけるなど、精密金属加工をはじめとして優れた技術を持つ企業グループ「由紀ホールディングス(HD)」(東京都港区)。 【動画】リアル下町ロケット 倒産の危機にあった町工場を継ぎ、航空宇宙産業に挑戦 航空宇宙や医療、半導体など幅広い分野の部品加工をしています。 大坪正人代表取締役は、グループ全体の力を引き出すためのプラットフォームとして、2017年に由紀HDを設立します。 そこには、各企業の根幹である「ものづくり」への熱い思いがありました。
◆製造業のファンを増やしたい
由紀HDは、大坪氏の祖父・三郎氏が1950年、神奈川県茅ヶ崎市でねじやナットの町工場として創業したのが始まりです。 のちに由紀精密と名称を変え、2013年に大坪氏が3代目の社長に就任しました。 次々と姿を消してゆく公衆電話の部品加工が主力だった町工場で、大坪氏は新しいアイデアを次々と繰り出していきます。 「こうのとり」の部品は代表格ですが、ほかにも多様な分野に進出しました。 例えば、学生時代の同期だった広告会社のプロデューサーと企画した工場音楽レーベル「INDUSTRIAL JP」。 由紀精密をはじめとする町工場の映像と音を使ってプロのDJたちがリミックスした映像作品を、ウェブ上で公開しました。 「ファンを増やしたいのです。製造業・ものづくりや由紀精密を好きになってくれて、いつか仕事を依頼したいなと思ってくれたら」。
◆レコードプレーヤーにも進出
また、2020年6月に発表したアナログオーディオプレイヤー「AP-0」。 当時の技術開発部長、永松純氏が、由紀精密の強みを生かし、直接顧客に楽しんでもらえる商品として、レコードプレーヤーに辿り着きました。 オーディオ機器は全くの新規参入で、開発は手探りでしたが、製品は大きな話題になり、専門誌の表紙を飾るなど評判は上々でした。 「最初から採算を合わせようと思っていると、力が入りすぎてしまう」と大坪氏。 「出来上がった製品が、自分たちも喜べる良品になっていることと、話題性が絶対あることを大切にしたい。 売れ行きよりも、我々の技術力がアピールできるものを、積極的に作っていきたい」と語ります。