消費者と作り手つなぎ食品ロス削減、口コミで利用者伸ばすエリア限定ECサイト パナソニックHDが藤沢市で運営
農家やパン屋など作り手の地域を限定したECサイトの運営が神奈川県藤沢市で始まった。購入者は、指定された日に市内の商業施設まで商品を取りに来る。少し手間はかかるが、消費者と作り手を近距離でつなぐ場となり、地産地消の推進や食品ロスの削減につながっている。サイトを運営するのは、パナソニックホールディングス(HD)。冷蔵庫やエアコンから電気自動車(EV)の電池まで手がける総合家電メーカーが、大量生産、大量消費からの脱却を訴え、製品ではなくサービスで生活圏の支援に乗り出している。(共同通信=小林笙子) ▽注文の3日後に受け取り ECサイトは「ハックツ!」という名称で、5月に始まった。約20の生産者が参加し、有機野菜やコーヒー豆のほか、複数の商品が入った「お試しセット」を販売する。大々的な広告は打たず、住民の口コミで徐々に利用者数を伸ばしている。 農産物を取り扱い、ネットで注文するという点は他のECサイトと同様だ。大きな違いは、1週間の内に注文日と受取日が指定されていること。日曜日までに注文し、3日後の水曜日に受け取る仕組みで、受注生産を実現した。食品ロスの発生を防ぐほか、消費者には新鮮な野菜や焼きたてのパンを届けることが可能となった。作る側にとっても在庫を抱える心配がなくなり、生産スケジュールを立てやすい利点がある。
▽地域がつながるきっかけに 注文者が商品を取りに来る仕組みは珍しい。パナソニックHDの工場跡地に建てられた商業施設に受け取りスポットを設け、利用者は水曜日の午後に商品を受け取る。訪れたついでに住民の交流を促そうと、生産者を招いてのイベントも企画している。自宅への宅配も有料で選べるが、施設から約2キロ圏内の近隣住宅に限定している。 ECサイトの運営を担うパナソニックHDモビリティ事業戦略室の芦澤慶之さんは「『ハックツ!』を通じて藤沢全体が盛り上がり、地域がつながるきっかけにしたい」と意気込む。あえて特定の地域に限定したサービスを提供することで、その地域への理解や愛着が深まると期待を寄せる。生産者の顔や商品へのこだわりを知ってもらおうと、作り手の紹介パンフレットを作成。芦澤さんは「生産者のファンづくりを進めることが、いずれは収益を上げることにつながる」と話す。 ▽「野菜作りに集中できる」