なぜか「だれからも好かれる人」がSNSのフォローを0人にしている納得の理由
「タイトルに共感した」「優しく包んでくれるような本」「どんどん読み進めていけました」など、読者からの共感の声が続々届いているベストセラー『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(著:キム・ダスル、訳:岡崎暢子)は日韓累計35万部を突破した。本書では、「気分」をコントロールし、毎日を機嫌よくすごすために必要なことが軽やかな語り口で書かれている。本稿では、『機嫌のデザイン まわりに左右されないシンプルな考え方』の著者であり、プロダクトデザイナーの秋田道夫氏に、SNSとの上手な付き合い方を伺った。(取材・文 宮本恵理子、構成 ダイヤモンド社書籍編集局) ● SNSでも「舞台から降りない」 ――秋田さんのX(旧Twitter)アカウントを見ると、フォロワー数が10万人前後なのに、秋田さんがフォローしている人の数は0人。これにはどんな理由があるのでしょうか? 秋田道夫(以下、秋田) 簡単です。誰か一人をフォローしたら、知り合い全員をフォローしなければならなくなるでしょう。 「秋田さん、わたしをフォローしてくれない。さみしいな」と思わせていないかと気になってしまうから、いっそのこと誰もフォローをしないと決めたんです。 同じ理由で、わたしの投稿には知人友人に関する内容は一切ありません。ふと思いよぎった言葉、何度でも伝えたい大切な言葉、街の風景やお気に入りのチョコレート、画家の名作についてのつぶやきを毎日大量に投稿していますが、「今日、誰それに会いました」「○○さんの作品は素敵です」といった、特定の知人に関わることは書かないようにしているんですよ。 ――無意識に誰かをモヤモヤさせてしまうことがないように、という気遣いなのですね。SNSはとかく「炎上」が起きる場でもありますが、炎上とは無縁の空気が漂っています。何か心がけていることはありますか? 秋田 まず、思ったままをダイレクトに書いて投稿するということはしないようにしています。SNSの投稿というのは公共の場に放つようなものですから、モラルとユーモアが大切です。 そして、断定しないこと。まじめな話をストレートに書くときには、お説教のように受け取られないよう、「なんちゃって」のニュアンスを語尾に添えたりするんです。 かといって、妙にすり寄ることもしません。日常生活や家族の話題は無用に書かない。日記ではないのですから、あくまで“秋田道夫”という人物を表明するコミュニケーションであることを忘れない。 イメージとしては「舞台から降りない」という姿勢です。SNSは見られるに徹するようにしています。だから『あなたはどう感じましたか?』と投げかけるようなポストは20年間続けたブログも含めて一度もした事がありません。 ● 「100年前の人の話しか信じない」 ――SNSとの付き合い方に関しては「いろんな人のいろんな意見に振り回されて、自分を見失いそうになる」と悩む人も少なくありません。 秋田 そもそも、わたしも含めて人がどれだけ世のためになる事を成したかという評価は、10年、20年の単位では定まりません。 ずいぶん前になりますが、あるウェブサイトで書評を頼まれたことがあったんです。私はデザイナーなので、「デザイン分野の本のレビューをお願いします」というリクエストでした。 依頼を受けてからしばらくは、現役で活躍しているクリエイターの新刊を中心に紹介しようとしていたのですが、「この人の仕事が30年後にも評価されているかどうかは分からないなぁ」という疑問がぬぐえなくて、さっさとやめてしまいました。 死んで何十年も経ってなお評価される作家や画家の作品には説得力がありますよね。わたしが好きな作家の一人、夏目漱石も生きていた時代にはもっとポピュラーな作家がいたそうです。 「100年前の人の話しか信じない」と決めたら、今を生きる人たちのいろんな意見に振り回されなくなりますよ。 ――近視眼的に短期の評価だけに一喜一憂していると、本質を見誤る可能性があるということですね。 秋田 はい。ただし、他人のことを一切気にしないでいい、とは思いませんよ。 私たちが生きる日常というのは、高速道路を走っているようなもので、周りの車と速度を合わせなければ事故を起こしてしまいますからね。お互いの動きを気にしつつ、適度に車間距離をとりながら安全運転でいきましょう。 秋田道夫(あきた・みちお) 1953年大阪生まれ。愛知県立芸術大学卒業。ケンウッド、ソニーで製品デザインを担当。1988年よりフリーランスとして活動を続ける。代表作に、省力型フードレスLED車両灯器、LED薄型歩行者灯器、六本木ヒルズ・虎ノ門ヒルズセキュリティゲート、交通系ICカードのチャージ機、一本用ワインセラー、サーモマグコーヒーメーカー、土鍋「do-nabe240」など。2020年には現在世界一受賞が難しいと言われるGerman Design AwardのGold(最優秀賞)を獲得するなど、受賞多数。2021年3月よりX(@kotobakatachi)で「自分の思ったことや感じたこと」の発信を開始。2022年7月からフォロワーが急増し、10万人を超える。著書に『機嫌のデザイン まわりに左右されないシンプルな考え方』(ダイヤモンド社)、『かたちには理由がある』(早川書房)がある。
秋田道夫