「再現度高すぎ…」90年代「少女漫画ドラマ」で人気女優が魅せた「キャラ憑依」演技
■奇抜な設定を見事に実写化! 『イグアナの娘』
ドラマ『イグアナの娘』は、1996年4月からテレビ朝日系列で放送された作品である。原作は1992年に『プチフラワー』(小学館)にて掲載された、萩尾望都さんの短編漫画だ。 物語のあらすじはこうだ。川島なお美さんが演じる青島ゆりこは、長女・リカ(菅野美穂さん)の姿がイグアナにしか見えず、どうしても愛することができない。その一方で、次女のまみ(榎本加奈子さん)のことは溺愛している。 やがてリカも母親が自分をイグアナだと思っていることに気づき、自身をイグアナとして認識するようになってしまう。本作はこうした母との愛憎の葛藤を抱えながら、リカが成長していく姿を描いた物語だ。 筆者は当時このドラマのタイトルを聞いたとき、なんとも信じがたい設定に驚いた。番組を宣伝するCMでは、菅野さんが鏡を見るとそこに映るのはゴツゴツしたイグアナ……となんとも奇妙で、最初は「ギャグドラマなのか?」と首をかしげた記憶がある。 このような奇抜な設定とは裏腹に、本作は物語が進むにつれて視聴者の関心を集めていき、視聴率も次第に上昇。大きな話題となった。 このドラマはリカがただ母親に愛されたいという純粋な願いを抱きながら、孤独と葛藤のなかで自分を模索していくストーリーだ。このテーマは現代社会においても共感を呼ぶものであり、今見てもきっと深い意味をもたらしてくれるように思う。奇抜な設定というだけでなく、そのストーリー性も含め多くの人の心に残った名作である。
■高飛車の麗子を見事に演じきった松雪さんが凄い『白鳥麗子でございます!』
鈴木由美子さんによる漫画『白鳥麗子でございます!』は、1987年から『mimi』(講談社)で連載され、多くのファンを魅了した恋愛コメディだ。これまでにも幾度か実写化されている本作だが、今回は1993年1月からフジテレビ系列で放送されたドラマを紹介したい。 まずはあらすじを説明しよう。本作に登場するヒロイン・白鳥麗子は、大富豪の娘で生粋のお嬢様。幼少期から幼なじみの哲也が大好きなものの、高いプライドが災いし、高校時代にはせっかくの彼からの告白を断ってしまう。 そのことを後悔している麗子は哲也を追いかけ続け、ついには2人で一緒に暮らすことに。しかし、麗子の超天然で勘違いの性格が、次々にトラブルを巻き起こす……というものだ。 ドラマでヒロインの麗子を演じたのは松雪泰子さん、哲也役を務めたのは萩原聖人さんだ。原作の麗子はいつもバラの背景に囲まれ「オーホッホッホ」と高飛車な笑い声を響かせるキャラクターなのだが、松雪さんは麗子特有の勘違いぶりや華やかさを見事に再現。突き抜けた演技を披露していた。 彼女の高飛車ながらも可愛らしいキャラクターは、まさに「お嬢様キャラ」を極めた存在で、多くの視聴者の心を掴み、ドラマの成功の最大の要因になったと言える。 ちなみに、このドラマのテーマ曲は『24時間テレビ』(日本テレビ系)の定番曲としても知られているZARDの名曲『負けないで』だ。哲也を想いながらも自身のプライドゆえに素直になれない麗子に向けた応援歌のように感じられ、ドラマの雰囲気にもぴったりとマッチしていた。 90年代に放送された少女漫画を実写化したドラマの数々。少女漫画ならではの個性的な設定の作品も多く、今、CGなどの技術を駆使して実写化したら、さらに良い映像になるかもしれない。しかし映像技術が今より劣る90年代だからこそ、再現への工夫や手作り感に溢れた演出が随所に見られ、それも味があって良かったように感じる。 漫画を実写化したドラマは今後も誕生するだろう。今回紹介した作品同様、心に残る実写ドラマの誕生に期待していきたい。
でかいペンギン