Z世代がジャズスタンダードを大合唱、新たな歌姫レイヴェイの一大現象を「音楽の殿堂」で目撃
誰もがレイヴェイの「魔法」に夢中
曲が終わるたびに聞こえる「I Love You」という歓声。今やInstagramで300万人、Tiktokで500万人のフォロワーを抱える彼女が、Z世代からの絶大な支持を得ている理由はひとえにその親しみやすさであろう。これらのSNSにはレイヴェイにTikTokを勧めた双子のユニアとの仲睦まじげな投稿や自身の普段の姿など、歌姫ではなく自分の友達にすら錯覚してしまうような距離感の投稿が並ぶ。ステージを縦横無尽に歩き回りながら歌う姿はとてもキュートで、しかしその低く暖かみのある歌声は往年のスターを想起させ、目が離せないぐらいの存在感を放っていた。 この日のハイライトとも言える「Goddess」は、まさにそんな持ち味が存分に発揮された圧巻のパフォーマンス。ピアノと向き合い「私はステージ上の女神、孤独なときは誰もが1人の人間」と独白のように歌い上げながら、スポットライトを一手に集めるレイヴェイ。先ほどまで歌姫として注目を集めていたはずなのに、いつの間にか音楽とただ直向きな1人の女性そのままの姿に釘づけになっていた。留まることなくどこまでも伸びていく歌声は大きなカタルシスをもたらし、曲中に関わらず大きな歓声が上がる。 レイヴェイに音楽活動のきっかけをもたらした母も、アイスランド交響楽団のヴァイオリニストとして、以前この「音楽の殿堂」に立ったことがあるそうだ。そんな母と同じステージに立てたことや、ロンドンという街、人々へしきりに感謝を告げつつ「この愛を伝えるには」と、本編ラストに披露されたのはとびきりポップな「From The Start」だ。ボサノヴァ調のリズムに弾むレイヴェイが、客席にマイクを向けると響くのはお決まりの「Blah Blah Blah!」の大合唱。双子の妹であるユニアが登場する嬉しいサプライズも起こり、Lauverたちの盛り上がりは最高潮を迎えた。「キューピッドに心を打ち抜かれる」なんてラブソングを歌っているが、ふざけ合って踊る彼女たちがとてもチャーミングで、まさにキューピッドのようだと見惚れてしまう。「私の靴を盗んだの!?」なんてユニアに冗談をいれるレイヴェイを笑いながら、ユニアがヴァイオリンの旋律を響かせ、2人はステージを降りていった。 鳴り止まないアンコールの声に押され、ステージに帰ってきたレイヴェイ。「自分の夢が不可能だとは思ったことはなかったし、それが今は叶った。そしてそれはあなたにもきっと起こること」という前置きで披露された「Letter To My 13 Year Old Self」は、彼女が泣きながら作詞したという過去の自分へのバラードだ。「いつかステージに立っているあなたへ、少女たちからの歓声が上がる」と彼女が歌うと、オーディエンスが一斉に彼女の名前を叫ぶ。まだまだあどけない彼女が、今日このステージに立っていることを誰も不思議に思わなかっただろう。誰もがレイヴェイに夢中で、ただただ彼女の音楽に魔法をかけられてしまう。 「私はジャズを心から愛していて沢山の影響を受けたの。だからどのアルバムにも収録しているんだけど、やっぱり最後はそんなジャズ・スタンダードで」と、記念すべきショーのラストを彩ったのは、80年前にリリースされた「It Could Happen To You」。1940年代のジャズ・スタンダードが、2024年のオーディエンスの体を揺らす。時代を越えるラブソングが最後まで会場を満たしていたのは煌びやかでうっとりとした雰囲気、誰もがそんな幸福感に包まれながら、ゆっくりと魔法がとけていくようにショーは大団円で幕を下ろした。 記事冒頭に戻るが、何度、今日この瞬間を2024年なのかと疑ったことだろうか。しかしそれは決して古めかしいと感じることではない。過去を今に昇華して、その響きが現代の若者たちを魅了している。それは文字通り彼女の才能としか言いようがない。「自分の歌声はどのポップ・シンガーにも共鳴できなかった」とインタビューで語ってた彼女は、往年の女性ジャズ・シンガーたちと巡りあい、ジャズを新しい世代へ押し広げてきた。ぜひこの夏、サマーソニックで彼女を目撃して欲しい。彼女が時代のポップ・アイコンへと駆け上がっていく物語はきっとまだまだ始まったばかり。 --- レイヴェイ 『Bewitched: The Goddess Edition』 日本盤CD:2024年7月3日(水)リリース予定 輸入盤CD/アナログ盤/デジタル配信 発売中 SUMMER SONIC 2024 2024年8⽉17⽇(⼟)18⽇(⽇) 東京会場:ZOZOマリンスタジアム & 幕張メッセ ⼤阪会場:万博記念公園 ※レイヴェイは東京1日目、大阪2日目に出演
Kaede Hayashi