<スポーツライター藤原史郎の目>広陵と広商 敗戦から学び、夢舞台へ /広島
夏の甲子園と違って同じ県から複数校出場の可能性があるのはセンバツの魅力である。そしてもう一つ、一度負けても甲子園を目指せるチャンスがある。広陵は秋季広島県大会準決勝で広島商に負け、広島商は秋季中国地区大会決勝で広陵に敗れた。 県大会準決勝で広島商は、公式戦登板の無かった1年生左腕・加藤を先発させた。期待に応えて6回2失点(自責点1)と試合を作り、8―4で勝利した。「制球が良く、無駄な四球を出さない」と荒谷忠勝監督の狙い通り、一回2死から四球を与えたものの、以後六回までは無四球で投げた。 対戦した広陵の中井哲之監督は「(球速)100キロの左(投手)は練習できない。のらりくらり上手(うま)くかわされた」。遅い球を引っ掛けた打球が目立った。6―5の接戦だった準々決勝の盈進戦でも引っ張る打球が目立ったが、この試合は2本塁打を含む長打5本が得点に結びついた勝利だった。 3位決定戦以降の広陵打線は広角に打つ打球が明らかに増え、つなぐ意識が鮮明になって、中国地区の頂点まで駆け上がった。 県大会1位で中国地区大会に出場した広島商は、決勝で広陵に0―7で敗れた。県大会の近大福山戦と瀬戸内戦に1点差で粘り勝ち、中国大会準決勝の倉敷工(岡山)戦で終盤大逆転したチームとしては、あっさりと一方的に負けている。一回表の攻撃で連打に相手の失策も絡んで得た1死二、三塁のチャンスを逃すと、四回には連打で得た無死一、二塁をバント失敗とダブルプレーで逃した。この試合で犠打の成功も盗塁も無く、広島商らしさは見られなかった。「粘り強く戦って決勝まで来たが(選手)個々はまだまだ力不足」と指揮官は語ったが、静かに力量を確かめたようにも見えた。 「本当は点をやらずロースコアの展開に持っていく戦いをしたいと思う。ただ、今は投手を含めた守りが不十分なので、機動力を絡めた攻撃に頼っている」。敗戦から学んだ広商野球は課題の投手力を整備し、センバツでその成果を見せてくれるはずだ。 広陵は中国地区代表として出場した明治神宮大会で準優勝と健闘した。3試合で22得点したものの、23失点と課題も残した。準決勝は1点差で逃げ切ったが、被安打13で9失点。そして失策2。決勝は被安打18で11失点。7四死球を与え、さらに4失策が失点を膨らませた。全国レベルの強くはじき返される打球に対応するためには、投手も守備も更なるレベルアップが必要だ。この冬、攻守の技術と共にウエートトレーニングで一回り大きくした体で、4度目の春制覇を狙う。