「アニメの制作本数多すぎ問題」なぜ? 背景にPlayStation2がもたらした「変化」が
「DVDプレイヤーの普及」に大きな貢献
「PS2」発売時に注目されたのは、進化したゲームハードとしての性能だけではありませんでした。当時それほど普及が進んでいなかったDVDプレイヤーの機能も盛り込んでいたのです。「PS2」の初期のモデルはディスクの読み込みに問題を抱えていましたが、それでも各家電メーカーがDVDプレイヤー本体の価格を「PS2」より安くしなければならないほど、大きな影響を及ぼしました。 結果として、各社から発売されるDVDプレイヤーが廉価となり、一気に普及がすすみました。その結果、アニメビジネスにおいて、「DVDを販売することで収益を高める」という手段が生まれました。現在はDVDの発売が話題になることはあまりありませんが、2000年代前半から2010年代後半の時期は、DVDの販売枚数がアニメの人気を現す指標として、取り上げられることも多かったのです。 DVD販売による新たな収益源を手に入れたことが、アニメの制作本数を押し上げました。仮に10本中1本しか人気が出なかったとしても、損失を補填し利益を獲得することが可能となったのです。2000年代後半には海外の違法ファンサブ動画(現地のファンが日本のアニメに独自の字幕をつけて公開した動画)に押されるなどの理由で一時勢いを失いましたが、2014年には制作本数が322本と、初めて300本を突破しています。 現在、アニメの視聴は国内外ともに動画配信サービスへと移行しており、DVDやブルーレイなどのソフトに注目が集まる機会は多くありません。それでも、今のアニメのムーブメントを引きおこした要因として「PS2」が果たした役割は、大きかったと言えるのではないでしょうか。
早川清一朗