ブルペンで力投する茨城トヨペット・中島（撮影・五島　佑一郎）

　24日に行われるドラフト会議。フリーライターの菊地選手（42）が、全国を飛び回り探し出した隠し玉を紹介する。 【写真あり】【スポニチが選ぶ虎のドラフト候補　投手編】関大・金丸、愛工大・中村優が双璧　補強ポイントに合致 　ユニークな形態の社会人野球チームに、面白いドラフト候補がいる。茨城トヨペットの中島悠貴だ。 　茨城トヨペットの所属選手はすべてセールスコンサルタントで、トヨタ車の販売業務に従事している。野球部としての活動は月曜と木曜の週2日に限定される、本業第一主義だ。そんなチームが今年の都市対抗北関東地区予選で、名門・日立製作所を3対1で破る金星を挙げた。立役者になったのは、この試合で完投した最速151キロ左腕の中島である。 　茨城トヨペットはかつてプロ球界で「鬼軍曹」と呼ばれた伊原春樹さんがアドバイザーを務めている。伊原さんは中島についてこのように語る。 　「もともとスピードはあったけど、今年に入ってストライクが入るようになりました。4～5月頃の状態がいい時のボールなら、プロでも中継ぎとして使えるんじゃないかな」 　日大では柔らかすぎる上半身の動きを制御できず、制球難にあえいだ。リーグ戦登板は数えるほどだったが、茨城トヨペットに入社後に自分の体を自在に扱えるようになった。中島は「グラブの使い方」をポイントとして挙げた。 　「縦とじのグラブを使うようになってから体が早めに開くクセが改善されました」 　日頃は筑西神分店で勤務する。モットーは「モノを売るのではなく、心で売る」だと中島は力説する。 　「ただ車を売るのではなくて、その車に乗ることで得られるご家族の思い出まで価値を見い出していただけるように努めています。お客さまに『中島さんから買いたい』と言ってもらえたときに、喜びを感じます」 　セールスコンサルタントとしての仕事が野球に生きることはあるのか。そう尋ねると、中島は少し考えてからこう答えた。 　「固定概念にとらわれないことですね。燃費がいいとか、車体のサイズがどうとか私たちがいいと思っているものと、お客さまが求めるものの間にはギャップがあります。僕は押し売りではなく、お客さまのニーズに合ったセールスをしたいんです。野球も同じで、セオリーに縛られるのではなく、対戦相手を見て時にはセオリーを外した攻め方をしたほうが、いい結果につながることもあります」 　次は自分自身をプロ球団に売り込む番だ。心で投げるサウスポーに吉報は届くのか。 　◇中島　悠貴（なかじま・ゆうき）2000（平12）5月7日生まれ、群馬県出身の24歳。日大高、日大を経て、茨城トヨペットに入社。社会人2年目の今夏はエイジェックの補強選手として都市対抗に出場し、好リリーフで勝利投手に。最速151キロの重量感のあるストレートを武器にする。愛車はトヨタ・カローラクロス。1メートル76、82キロ。左投げ左打ち。 　◇菊地選手（きくちせんしゅ）1982年（昭57）生まれ。本名・菊地高弘。雑誌「野球小僧」「野球太郎」の編集部員を経て、15年4月からフリーライターに。ドラフト候補の取材をメインに活動し、X上で「大谷翔平」と投稿した最初の人物（10年10月8日）。野球部員の生態を分析する「野球部研究家」としても活動しつつ、さまざまな媒体で選手視点からの記事を寄稿している。著書にあるある本の元祖「野球部あるある」（集英社）などがある。Xアカウント:＠kikuchiplayer