野菜高騰が家計を圧迫 消費者の節約志向が与える日本経済への影響とは?
11月には初雪が観測されたり、急にコートのいらない暖かい日があったり、気候、気温の不安定は私たちの健康のみならず、農作物の収穫にも大きな影響を与えます。 スーパーマーケットで売られている野菜も驚くほどの高値で売られているときがあり、手にとってはみたものの買わずに済ませてしまうケースもあります。野菜の高騰は家計に負担を与えますが、消費者がとるある行動は、日本経済にも大きな打撃を与えることになります。野菜の価格がもたらす経済への影響を第一生命経済研究所の主任エコノミスト・藤代宏一さんが解説します。
多くの消費者が知るとおり野菜価格が急上昇しています。速報性に優れた11月の東京都区部消費者物価統計によると生鮮野菜は前年比+38.9%と、2004年11月以来の上昇率となりました。ここまで来ると、日本経済全体に与える影響も無視できないレベルになってきます。 実際、当社の試算ではこのところの生鮮食品価格の上昇によって10-12 月期の実質消費支出が▲0.3%pt下押しされるとの結果が得られています。ちなみに0.3%ptという数値は一見すると小さく感じられるかもしれませんが、日本の潜在成長率(資本・労働力をフル活用した場合に達成される成長率)が0%~0.5%とされている現状に鑑みれば、決して小さなインパクトではありません。
野菜価格高騰の影響は物価統計のみならず、様々な指標に影響を与えています。12月5日に発表された消費動向調査では消費者マインドの悪化が確認されました。この1カ月くらいは株価が上がっていたので、通常であればマインドも明るくなるはずでしたが、野菜の値段が上がったことで消費者が生活防衛意識を強めた可能性が示唆されます。この間、ガソリン価格も値上がりしていたため、消費者は“値札”で値上がりを感じたと思われます。 また、8日に発表された景気ウォッチャー調査でも「野菜の価格高騰が続いていることで、客が肉や魚など、ほかの商材の消費を節約する傾向がみられる(北海道、スーパー)」、「業務用は安定しているが、家庭向けが思ったよりも伸びていない。野菜の高騰などが原因とも思われるが、全体的に消費が減退している(近畿、食料品製造業)」とのコメントがあり、野菜の値上がりが広く話題となっています。