SP5位の羽生はFPで逆転可能か?
フィギュアスケートGPシリーズ第6戦・NHK杯の男子ショートプログラム(SP)が11月29日に行われ、中国杯での負傷を押して出場した羽生結弦(ANA)は、86・28点で首位に立った無良崇人(HIROTA)と8・28点差の78・01点で、5位発進となった。 羽生が12月にスペインで開催されるGPファイナルの出場権を自力でつかむにはNHK杯で3位以内に入ることが必要。29日のフリープログラム(FP)で大逆転することは可能か。
満員の観衆を飲み込んだ大阪・なみはやドーム。各国からの出場選手を和やかなムードで応援していたスタンドに、うっすらと緊張感が浮かんだのは、男子シングル最終組の6人で行う6分間練習が始まったときだった。 今なお記憶に残る、中国杯での羽生と閻涵(えんかん)の接触事故。強行出場を決意した若き王者の体調を気遣い、固唾を飲んで見守るファンの目の前で、羽生は得意の4回転トゥループを成功させ、大きな拍手を受けた。 他の選手と数十センチほどまで接近した際にはどよめきも起きたが、その後も黙々とジャンプを確認。おおむね好感触を掴んだ状態で、最終11番滑走でリンクに立った。 ところがスタートポジションに立ち、ポーズを取って静止していると、不意にアナウンサーの声が聞こえてきた。「集中力が切れていたのだと思う」と羽生。 悪い予感はジャンプで現実のものとなってしまい、冒頭のジャンプでは得意の4回転トーループで尻もちをつき、後半に3回転+3回転を予定していたコンビネーションジャンプでは、一つ目の3回転ルッツの着氷で両手を氷に付いてしまうミス。コンビネーションを成功させることができず、自ずと得点は低調なものになった。 「4回転は跳んでいるフォームとしては間違いなく良かった。(コンビネーションジャンプは)体力がなかったわけではない。皆さんも見ていてお分かりだと思いますが、6分間練習では跳べていた。跳べているものが跳べていないのだから、それは僕自身の実力の問題。自己採点は30点」 口調はまるで自身を責めるかのようだった。ただでさえコンディション面に不安がある中、この状態からフリーで巻き返すことは現実的な目標とできるものなのだろうか。 ここで一つ大きなポイントになってくるのは、選手自身のメンタルがどうのような状態なのかであるが、羽生の場合、この点は問題ない。 SP終了後の取材エリアでの第一声は、「悔しいが、この感情は明日のフリーに向けてプラスになると思う。練習を信じてやっていきたい」というもの。すでに逆転のイメージはできている。 技術的な観点で言えば、失敗したジャンプの問題点を洗い出しているかどうかだが、この部分についても羽生は悲観的ではない。 「跳んでいるフォームとしては間違いなく良かったと思う。悪かった点に関しては目星はついているので、その何点かをあしたの練習でやってみる」と、すでにチェックポイントを見つけていることを強調。修正要素の一つは回転時のスピードで、「回転速度が少し遅かったので、速くするような練習をやる」と、修正手順まですでに見つけている。