不正輸出で逮捕から一転...中小企業に起きた“冤罪事件” 経済安全保障と企業のリスク【WBS】
2020年、横浜の機械メーカー「大川原化工機」の社長らが、不正輸出の疑いで逮捕された後、起訴が取り消されるという異例の事件が起きました。社長らは不当逮捕だったとして国を提訴、その判決が12月27日に言い渡されます。社長らはなぜ不正を疑われたのでしょうか。取材を進めると、経済安全保障の強化が進む中、企業のリスクと問題点が見えてきました。 事件の舞台となったのは横浜にある「大川原化工機」。社長の大川原正明さんは2020年、機械の不正輸出に関わった外為法違反の疑いで、幹部2人とともに警視庁公安部に逮捕されました。 不正輸出が疑われたのは、液体を粉末にする噴霧乾燥機。電子部品の材料などを粉末にする際に使うもので、条件を満たす一部の製品は、生物化学兵器に転用される可能性があるとして、輸出規制の対象になっていました。 「こういう機械でとても危険なものはできない」(大川原社長) 社長が見せてくれたのは、逮捕後に社員たちが行った実験データです。輸出した製品が、規制対象に当たらないことを証明するため、何度も自分たちで実験を繰り返したといいます。 すると、逮捕から1年半後、検察は突然「有罪の立証は困難」として、初公判を前に起訴を取り消すという異例の決定をしたのです。 社長の勾留は332日に及びました。なぜ無実の罪で逮捕されたのか。大川原社長は国と警視庁を管轄する東京都に約5億6000万円の損害賠償を求め提訴しました。
すると裁判で、当時の捜査に関する衝撃の内容が次々と明らかになったのです。 「公安部が事件をでっち上げたのではないか」(原告弁護士) 「まぁ捏造ですね」「捜査幹部にそういう欲があった。それしか考えられません」(捜査員) 大川原社長は「しばらくの間、外為法違反の事件がない。大きい事件がなかったのでというんで、なんとしてでも事件として作りたかったんだろう」と推測します。