低予算? 円安&物価高? 厳しい条件の中でも「海外旅ロケ番組」がちゃんと放送されているワケ
「いわゆる『お試し枠』でもあるのですが、その中には地方局制作で、けっこう力を入れているものだったりすることもあります。ある意味社運をかけた番組でもあるので、予算が多く注ぎ込まれることはあります。 お試し枠でなく、キー局制作のゴールデン・プライムの、まさに社運をかけたような大型連ドラや周年記念といった特別ドラマなんかは大規模な海外ロケを行うこともありますが、バラエティや通常の旅番組にはそこまで特別な予算が割かれないとは思います」 ◆「しっかりした映像」でなくてもOKな時代に 出演者側の事情はどうなのだろうか。 「時にはタレントさんや俳優さんが、自分でカメラを回すこともあります。だけど、そういう自分でカメラを回すという撮影スタイルも、海外に限らずロケ番組ではすっかり定着した手法でもありますので、出る側にも見る側にも抵抗はないと思います」 その究極に削ぎ落としたかたちのひとつが、本来ディレクターというスタッフでありながら全て自分で撮影し、自分自身が出演するというナスDの番組ではないだろうか。 「配信などが増えたことも見る側、出る側それぞれに大きいでしょうね。 もちろんタレントやディレクターは撮影のプロではないですが、近年の視聴者は、そこまで完璧なものを求めているわけではなくて、そこで何が起こるかのほうを重視することが多いです。 ハイクオリティで絶景を撮るみたいなものはまた別ですが、スマホカメラの進化もあり、街ロケ番組などでは多少ぶれていたり画角が微妙だったりしてもそれほど気にしません。 たとえば料理の絵とか、しっかり見せたいものを別カットでしっかり押さえられていれば、あとは楽しそうにしている雰囲気が出せたらいいわけです。 低予算を逆手にとって、安宿に泊まったり、現地の市場や公共交通機関に困惑したりコミュニケーションをとったりしながらの旅の様子なんかも、笑えるハプニングにつながったりすることもあるので、そういったものを期待する視聴者にとっては楽しいつくりになっているのではないでしょうか」 とはいえ、気になるのは、一時よりは落ち着いたものの今も続く円安傾向と現地の物価高の問題だが、そのあたりの事情はどうなのだろうか。 「そこに関しては、実は韓国や台湾、タイといった、円と現地通過とのレートの差がそれほどなくて、物価も安く、そして日本からの距離も近いアジア、東南アジアあたりが選ばれている機会がなんだかんだ多い印象があります。 『こんなに高いの!?』よりも、『こんな値段でこんなに食べられた!』のほうが見てて行きたくなったりするでしょうしね(笑)」 テレビ局自体の予算事情には大きな変化はなさそうだが、知恵と工夫、時代に合わせたスタイルによって、楽しい海外の景色や料理、人々の表情、雰囲気は、地上波でも届けられているというわけだ。 取材・文:太田サトル
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